マーケティング視点で自民党・民主党の党首選を考えてみる

2008.09.08

営業・マーケティング

マーケティング視点で自民党・民主党の党首選を考えてみる

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

<38.4% 対 34.9%> 福田康夫首相の退陣表明後、2日夕から3日にかけて実施した共同通信社による全国緊急電話世論調査の結果の数字である。<次期衆院選比例代表で投票するつもりの政党は、自民党38.4%、民主党34.9%>という結果だ。

本来、チャレンジャーの戦いの定石は「徹底した差別化」である。リーダーのポジションにに対し、自分たちの特徴やポジショニングを徹底して訴求するのである。例えば、有名な例としてはコカ・コーラ対ペプシが挙げられる。同じ「コーラ」という差別化要因の少ないプロダクトでも、ペプシはレモンフレーバーを効かせたり、比較広告を展開したり、ペプシマンなどのキャラクターを登場させたりして、「自分たちはコカ・コーラとは違うんだ!」「わかっている人、おしゃれな人、味のわかる人はペプシを選択してくれ!」と主張し続けるのである。
対して、リーダーはどのような戦い方をするのか。一つの典型が「同質化」だ。チャレンジャーの主張するポジションや、新たに開発した商品と同じ属性を持った商品を開発力を活かし開発し、圧倒的な資金力で市場に広め、チャレンジャーを無力化する戦い方である。同じ飲料でいえば、コカ・コーラがスポーツ飲料カテゴリーで大塚製薬の「ポカリスェット」に「アクエリアス」で同質化をかけ、トップシェアを奪取した例が挙げられる。

では、チャレンジャーたる民主党はどうか。
前述の通り、強力に政策主張し自民党との差別化を展開すべき機会を、<小沢一郎代表の無投票3選が確実>で逸している。対して、自民党は多くの総裁選候補者が自説を展開することで、幅広い政策が(自民党総裁選ではなく国政の)有権者に届き、従来の民主党の主張がかき消され、結果として「同質化」をかけられたのと同じ状況に陥ることになってしまうと予想される。
それに対し、民主党は<民主、「埋没」を警戒 メディア対策チーム発足>という動きをするようだ。
http://www.asahi.com/politics/update/0904/TKY200809030324.html

チャレンジャーの「差別化」の戦い方の一つに「理論の呪縛化」というものがある。リーダーがこれまで顧客に発信してきたメッセージと明確に異なる製品サービスを展開し、リーダーの同質化を封じるというものだ。例えば、アサヒビールのビールの「キレ」という切り口は、いまでビールの「旨みや味わい」を訴求してきたキリンの追随を見事に封じた例といえよう。
これは政治の世界では全く当たり前なことであろうが、野党が与党に対して論理の矛盾を突き、独自の政策を掲げることに他ならない。しかし、その「呪縛化」を展開する機会を民主党が失って、埋没の危機にあるのだ。それが<メディア対策チーム発足>という展開で間に合うかどうかは少々疑問である。チャレンジャーは本来、リーダーに対して烈火のごとき攻勢をかけなければ差別化は図れないのだから。
民主党も幅広く政策を主張するために、あえて「党内で候補者を立て、活発な議論を代表選で展開すべし」という論も評論家の間から上がっている。現実性の程は政治評論の専門家ではないのわからないが、チャレンジャーの戦いとしては理にかなっている。
この後、果たして民主党で党首選が展開されるのか、はたまたメディア対策チームが活躍するのかはわからないが、政治の世界でのリーダー対チャレンジャーの戦いからは目が離せない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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