またしても突然の辞任記者会見。安倍前総理辞任から1年すらたっていないにも関わらず、政府・自民党、つまりはわが国のトップによる政権放り投げとも言える異常事態。どんな心理があったのでしょうか。
福田総理の辞任会見の内容に興味を持ったので、「首相官邸ホームページ」を見てみると、記者会見の全内容が起こされています。「出典明記すれば引用自由」と書かれていたので、勝手にその問答を用いてカウンセリングしてみました。
もちろんこれは正規のカウンセリングではありません。記者会見の言葉からカウンセリング的に心理を探ってみようという実験的試みですので。(「」は筆者記)
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首相官邸ホームページ「福田内閣総理大臣記者会見-平成20年9月1日」より
昨年、私は、安倍前総理からバトンを引き継ぎまして、9月26日に総理に就任以来、1年近く経ったわけでございます。その間、参議院選挙で与党が過半数割れするという状況の中で、「困難を承知でお引き受けした」ということであります。「正直申しまして、」最初から政治資金の問題、年金記録問題、C型肝炎問題、防衛 省の不祥事等々、次から次へと「積年の問題が顕在化してきた」ということに「遭遇いたした」わけでありまして、「その処理に忙殺を」されました。
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(分析)
福田内閣への批判はすべて自己責任ではなく、元々「負の遺産」を背負ったに過ぎない、との思いが強く現れている。「正直申しまして」と断ることで、これまでそういった責任を、ひたすら忍従してきた不満と受け取れる。
その中でも、将来を見据えながら、「目立たなかったかもしれませんけれども」、これまで誰も手を付けなかったような国民目線での改革に「着手」をいたしました。
例えば道路特定財源の一般財源化、また消費者庁の設置法の取りまとめ、国民会議を通じて、社会保障制度を抜本見直しするといったようなことでございます。「最終決着はしておりませんけれども、方向性は打ち出せた」と思っております。
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(分析)
自らの成果への自己評価を述べ、それが知られていないことに対するいらだちを一方では吐露している。しかし批判を想定し、「方向性」にとどまったことを認める。
(中略)
この臨時国会では、この対策を実施するための補正予算や消費者庁設置法など、国民生活にとって一刻の猶予もない重要な案件を審議いたします。 先の国会では、「民主党が重要案件の対応に応じず」、国会の駆け引きで審議引き延ばしや審議拒否を行った。その結果、決めるべきことがなかなか決まらない。そういう事態が生じたほか、「何を決めるにも、とにかく時間がかかったことは事実」でございます。
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(分析)
政策の実行が出来なかったことは自らの無能ではなく、民主党の責任であることを訴えたいという意思が強く出ている。一方で結果責任を自覚し、「時間がかかった」ことは認めている。
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2008.10.02
2008.10.14
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。