「公開から31日で100億円を突破!」が報じられたポニョ。歴代宮崎アニメの中でも大ヒットとして間違いないだろう。前作・ハウル以来4年ぶり。宮崎監督都が熱いハートで取り組んだ作品に対し、マーケティング的評論をするのも憚られるが、その成功のヒミツを少しだけ読み解いてみたいと思う。
「シネマトゥデイ」では以下のように報じられている。
http://sports.nifty.com/cs/headline/details/et-ct-N0014930/1.htm
<31日間で100億円突破の記録は、『千と千尋の神隠し』の25日間には及ばなかったものの、『ハウルの動く城』の33日、『もののけ姫』の43日を上回るハイペース>といことである。
かくも、人々に愛されるのは、作品自体のすばらしさにあることは間違いない。筆者自身も夏休みに家族で鑑賞し、10歳の娘共々、夢中になった。
映画作品そのものは、マーケティング的にいえば、「製品(Product)」にあたり、いわゆる「4P」の一要素だ。その中身を云々すると、ネタバレにもなるので詳細には踏み込まないが、例えばCG全盛の昨今、丁寧に手書きで書き込まれた作画、背景は作品全体でテーマの「海」の魅力を余すところなく演出している。また、一度聞けば忘れられず、うっかりするとアタマの中で無限ループをし、口ずさんでしまう「ポーニョ ポニョ ポニョ さかなの子・・・」のテーマソングをはじめ音楽も印象的だ。ストーリーもファンタジーでありながら、実は様々な物語が下敷きになっていたりと、知れば知るほど「もう一度観たい」と思わせる魅力がある。
・・・と夢中になって「製品(Product)」を語ってしまったが、マーケティングで大切なのは、「良い製品」であることだけではない。他の要素との「整合」が大切なのである。
まず、ターゲットとポジショニングだ。映画の場合、ポジショニングは取り上げるテーマそのものでもある。
過去の宮崎作品を思い起こすと、「風の谷のナウシカ」と「もののけ姫」は、メインターゲットを大人向けとした「問題提起型」の作品と言えるだろう。少々ポジショニングの表現が難しいが、「環境と共生」が大きなテーマであるこということである。
次に、「天空の城ラピュタ」と「ハウルの動く城」、「魔女の宅急便」と「千と千尋の神隠し」。前者が「冒険スペクタクル」であり、後者は「子供(少女)成長の物語」というポジショニングであるが、共に大人と子供の双方をターゲットとしている。
さて、今回の「崖の上のポニョ」は「となりのトトロ」と同じく、メインターゲットを子供とした親子で楽しむ「ファンタジー」だ。
上記のように、宮崎作品は同様テーマの作品が繰り返し造られており、同じターゲットとポジショニングの作品であれば、前作を元に期待が高まるのは必定だ。トトロは1988年公開であり、実に20年ぶりのテーマである。トトロは20年経ってもその魅力が色あせていないのだが、やはり新作が待ち望まれていたカテゴリーである。そこにきれいにはまったのが、今回の「ポニョ」であるのだ。
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2008.09.16
2008.10.03
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。