原油高を受け、ガソリン価格が高止まりしている。投機マネーによる一時的な現象との見方がある。確かに、そうした側面があることは否めない。しかし、ここで重要なのは視点を替えてみること。現状を魚の目で見た時、何が浮かび上がってくるだろうか。
クルマに乗る人が減っている
この春、一時的にガソリン価格が大きく下がった。税制が一瞬だけ変わったおかげだ。もっとも安い場合1リットルあたり120円ぐらいまで下がったのではないだろうか。ところが、安いガソリンはわずか一ヶ月で終わる。
再び税金が上乗せされたガソリンはしかし、元の値段にはとどまらなかった。ガソリンの元になる原油価格が一本調子で上がり続けたためだ。毎日のようにニューヨークで原油が市場最高値を付けた、といったニュースを見るようになった。その結果、今では1リットルが180円ぐらいにまでなっている。もちろん深刻な影響が出ている。
日本経済新聞の調査によれば、この間にクルマに乗る回数を減らした人は53%、調査対象者の半分強にもなる。乗車目的で減らしたベスト3は上から順に短距離のドライブ・レジャー、郊外型ショッピングセンターでの買い物、クルマを使った外食である(日本経済新聞2008年7月8日付朝刊3面)。買い物を控え、外食にも行かなくなった人が増えている。ガソリン価格値上がりの影響が物販、飲食に及んでいるわけだ。
仮に今後、さらにガソリン価格が上がり続け、1リットル200円となれば(もう目前に迫っている)、2割の人がクルマに乗るのをやめると答えている。さらに250円になれば、14%の人がクルマを手離すそうだ(前掲紙)。
以前のエントリーで二種類の三つの視点が重要だと書いたことがある。
一つは『虫の目』『鳥の目』『魚の目』である。では将来を読む上でもっとも重要な水面下の動きを見る『魚の目』で、現状を見るとどうなるだろう。まず最も重要なポイント、原油の価格と需給について考えてみると何が浮かんでくるか。
確かに現在の原油価格には投機マネーが大きく影響していて、実際の需給バランスに基づいた価格になっているとは言い難いようだ。ただし、それはミクロな視点と考えるべきではないだろうか。もう少し引いた視点で、この先の原油の需給状況がどうなっていくかを考えれば、答ははっきりしている。
すでに中東の大油田の中にはピークアウトを迎えたところもあるという。少なくとも中東の産油国が今後、原油の供給量を大幅に増やせる可能性は低い。そして世界的に見ても、以前の中東のような大油田が見つかることも考えにくい。要するに掘り出し易くて、埋蔵量も豊富な油田はほとんど残っていないというのが専門家の見立てである。
もちろん原油価格が上がったおかげで、オイルシェールやタールサンドなど原油代替製品が採算ベースに乗る可能性も出てきている。ただ、そうした製品が量産体制に入ったとしても、それで中国やインドを筆頭に爆発的に増え続ける需要を賄うことができるだろうかは未知数の部分がある。
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