就活で傷つく若者たち
「内定崩壊」が企業を襲う 後編

2008.07.02

組織・人材

就活で傷つく若者たち 「内定崩壊」が企業を襲う 後編

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

前編からの続きです。 少子化やパラダイム変化によって、かつてに比べ、ぐっと「失敗」「挫折」を経験することが減ってきた若者たち。優しい彼ら彼女らのメンタリティですが、時として「キレる」という牙も持っています。さらにその牙を行使するための場も出来ました。

直接企業を攻撃まで至らずとも、就活情報サイトでの悪評等、一方的書き込みは、やはり企業の採用活動においては一定のリスクと言えます。こういった意味で、インターネットは明らかに、これまでと違い、「選ばれる」学生側に武器となったと言えるでしょう。しかしその武器は正に「諸刃の剣」なのです。

就活情報サイトやSNS等、素人の学生同士が情報交換出来るサイトでは、素人同士で就活情報をやりとりするだけでなく、「指南」も行われます。特に学生だけでなく、社会人も加わりやすい、ミクシ等のSNSでは社会人経験数年の「先輩」がご高説を傾け、それをありがたく拝聴する、逆に痛いところを突かれて反発する、等が日常的に行われています。

「苦労して得た内定だけど、やはり夢をあきらめきれず、就活を止められない」「入社して1週間だけど、やっぱりやりがいが感じられないので辞めたい」こんな投稿に、「夢をあきらめるな」「後悔するくらいならまず行動」「輝けない自分は自分じゃない」「『石の上にも3年』なんて時代錯誤もはなはだしい」という、傷のなめ合い、自己肯定的賛同がワッと集まります。不幸なの・傷ついているのは自分だけではない、という意思の交換が瞬時に、24時間出来るネットという空間は、正に麻薬的な魅力をもたらすと言えるでしょう。

「優しい」子供たちは、就活で接するイカメシイ会社員の大人たち、面接で突っ込みを入れられることに傷ついているのです。ある時学生が駆け込んで相談に来ました。

学「圧迫面接を受けました」
私「何を言われたの?」
学「なんで文系なのに弁理士事務所受けたのかと言われました」
私「うーん、それは圧迫した訳じゃなく、単に志望動機を聞いただけじゃないのかな」
というやりとりの後、その学生はいかに自分が知財分野に関心が高いか、それにも関わらず企業はそういう話をきちんと聞いてくれないという文句を切々と語って行きました。

こういった現象が、一流大学と呼ばれる高偏差値校でも全く珍しくない光景となったのです。彼ら彼女らの「KY」能力は強烈で、企業の意図は超越して勝手に傷つき、それがネットで賛同を得て、さらに広まっていくという図を呼びます。前回述べました少子化等の影響で、失敗経験、挫折体験の無さもこれに追い討ちをかけるでしょう。
「超売り手市場」「この手で内定ゲット!」「企業内定難易度・偏差値」のような無責任な武勇伝は賞賛されこそすれ、その真偽の検証がなされることは無いのです。そもそも匿名ネット情報では検証しようがありません。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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