優秀なバイヤーは「交渉」に時間をかけません。 何故でしょうか?
以前、ある優秀なバイヤーさんと話をした時に
「私は交渉はしない」という方がいらっしゃいました。
その時は「そういう人もいるんだな」程度で
あまり深く考えていなかったのですが、考えてみると凄いことです。
坂口さん的に言いますと
「“利益”と“仕入れ”の仁義なき経済学」であり、
営業は一円でも高く売ることを考え、
バイヤーは一円でも安く買うことを考えています。
そういう中で「交渉しない」とともすれば
「高く買う」ことにつながるでしょう。
それでは「交渉しない」で「安く買う(というか高く買わない)」ことは
どうしたら実現できるでしょうか?
先週末に購買ネットワーク会の幹事の方が主催する
「材料費高騰とたたかうバイヤーの集い」なる会に参加してきました。
現場バイヤーの方々が昨今の材料高騰に如何に対応しているか、
という興味深い議論で色々な点で参考になりました。
この会の模様については別途また書きたいと思いますが、
その中でたいへん興味深い話を聞くことができました。
昨今の材料費高騰の中、多くのケースでまずはA4一枚で
「昨今の原材料の高騰で・・・自社にてコスト高騰を吸収してきましたが、
企業努力も限界に達し・・・AAにつきまして○%(×円/Kg)の
価格見直しをお願いいたします。」的な要請があり、
それに対しサプライヤさんには便乗値上げを抑制すべく
「値上げの根拠を提出してくれ!」と当然のことながら求めるわけです。
一方で、コストアップ要請額の妥当性を評価するため、様々な市況情報から、
バイヤー側でもコストアップ額の幅、時期を推計します。
その過程であるバイヤーさんがおっしゃるには
「コストアップ推計をすると、ほぼサプライヤの値上げ要請額になる」
ということでした。
またそういう方が一人だけでないことも分かりました。
実はこれは非常に興味深いことで、
サプライヤさんが「いい加減な見積り」を出していない。
ということの証明になるわけです。
先の優秀なバイヤーさんが「交渉しない」と明言されたのは
「いい加減な見積り」が出てこないから
「交渉する必要すらない」ということなのです。
日頃出てきた見積書を赤鉛筆で修正しているだけのバイヤーに対しては、
100円のものを120円で見積書を出し、20円査定されて、
当初考えていた100円で売る、というサプライヤ側の思惑に
まんまとはまってしまいます。
それに対して、自分で軸を持ち、物の価値やコストを推計する能力がある
優秀なバイヤーに対しては「いい加減な見積り」は出せなくなります。
つまり優秀なバイヤーであれば「交渉する必要すら」なくなるのです。
このような環境を作ること、
これもバイヤーにとっての重要な「交渉しない技術」なんだな、
と再認識しました。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。