2️⃣「教える上司」から「引き出す上司」へ私がコーチング研修をやって、やめた理由

2026.10.28

組織・人材

2️⃣「教える上司」から「引き出す上司」へ私がコーチング研修をやって、やめた理由

富士 翔大郎
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

2️⃣「教える上司」から「引き出す上司」へ 私がコーチング研修をやって、やめた理由 前回は、昭和の会社から現在までを振り返りながら、なぜ「共感」や「傾聴」が重要になってきたのかを考えました。

2️⃣「教える上司」から「引き出す上司」へ

私がコーチング研修をやって、やめた理由


前回は、昭和の会社から現在までを振り返りながら、なぜ「共感」や「傾聴」が重要になってきたのかを考えました。

会社の中に多様な人が増えた。

女性活躍が進み、働き方もキャリアも変わった。

家庭でも共働きが増え、「イクメン」という言葉が生まれた。

つまり、

「みんな同じ」を前提にしたマネジメントが通用しなくなった。

では、企業の管理職教育はどう変わったのでしょうか。

私自身の経験で言えば、その大きな転換点の一つが、

コーチング

でした。

⸻

昔の上司は「答えを教える人」だった

昭和型の管理職育成では、基本的にティーチングが中心でした。

上司には経験がある。

部下には経験がない。

だから、

「こうやるんだ」
「まずこれをやれ」
「分からなければ俺に聞け」

と教える。

これは別に悪いことではありません。

新人に仕事を教えるときなど、今でもティーチングは必要です。

私自身も長い間、

上司とは、部下より多くの答えを持っている人

だと思っていました。

ところが、時代が変わってきます。

仕事が複雑になる。

専門性も高くなる。

価値観も多様になる。

上司がすべての答えを持つことなど、できなくなっていく。

そこで注目されるようになったのが、

「答えを教える」のではなく「本人から答えを引き出す」

という考え方でした。

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「君はどう思う?」

私は、この言葉をとても大切にしてきました。

部下が、

「どうすればいいですか?」

と聞いてきたときに、

すぐ答えを教えない。

「君はどう思う?」

と返す。

簡単なようですが、これが結構難しい。

特に、私のような問題解決が大好きな人間には難しい(笑)。

だって、聞かれた瞬間、

「あ、それならこうすればいい」

と答えが浮かんでしまうからです。

しかも、経験のある上司ほど、この罠にはまりやすい。

答えを知っている。

だから教えたくなる。

しかし、それを繰り返していると、

上司はどんどん問題解決が上手になり、部下はどんどん上司に聞くようになる。

これでは、自立型人財は育ちません。

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コーチングで学んだ「傾聴・質問・承認」

そこで私が重視したのが、コーチングでした。

実践の中で特に大切にしたのが、

傾聴・質問・承認

です。

まず、話を聴く。

そして、

「君はどう思う?」

と質問する。

本人が考えたこと、行動したこと、成長したことを承認する。

上司が答えを与えるのではなく、

本人が考え、本人が答えを見つけ、本人が動く。

これは、私が目指していた自立型人財の育成とも非常に相性がよかった。

だから私は、コーチングを管理職教育にも取り入れていきました。

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ところが、アンケートでは大成功だった

研修を実施すると、反応はいい。

受講者も、

「勉強になった」

「部下とのコミュニケーションに使えそうだ」

「明日から実践したい」

と言う。

アンケートを見れば、

成功した研修

に見えます。

普通なら、ここで終わります。

研修担当者としても、

「満足度が高かった」

「理解度も高かった」

「良い研修だった」

と報告できる。

でも私は、研修のアンケートをあまり信用しなくなっていました。

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本当に現場で使っているのか?

研修の目的は、

研修を受けて「良かった」と言ってもらうことではない。

人の行動が変わること。

そして最終的には、

職場が変わること。

だから、私は研修後に現場へ確認しに行くようになりました。

当時の取材記事にも、その考え方が残っています。

「アンケートだけではなく、行動が変わったかを常に確認しに行きます」

つまり、研修直後の満足度ではなく、

「で、実際に使っているの?」

を見に行ったわけです。

そこで、かなりショックなことが分かりました。

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コーチング、使われてないじゃん(笑)

研修では評価されている。

コーチングそのものについても、

「いいですね」

と言ってくれる。

ところが現場に戻ると、

使われていない。

これには考えさせられました。

研修を受けた。

知識も得た。

本人も「役に立つ」と思った。

それなのに、行動は変わらない。

つまり、

「分かった」と「できる」と「やる」は、まったく違う。

ということです。

当時の取材記事でも、私はコーチングについて、

有意義なツールではあるが、全社に展開するのはいったん保留し、本当に必要とする人が出てきたら行う

という方向に変えたことを話しています。 人材教育201403号 (002).pdf

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私は「コーチングはダメだ」と思ったわけではない

ここは大事なところです。

私は、

「コーチングなんて役に立たない」

と思ったわけではありません。

むしろ逆です。

傾聴。

質問。

承認。

これらは、人を育てるうえで非常に重要な力だと今でも思っています。

だから後に作るパワーアップ研修にも、この考え方を取り入れていきます。

問題だったのは、

「良いものだから、全員に研修すれば使われるだろう」

という発想でした。

人は、研修を受けたからといって変わるわけではない。

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魚を釣りたくない人に、釣竿を渡していた

当時の取材で、私はこんなたとえを使っています。

「魚釣りをしたいと思っている人に釣竿をあげる」

コーチングも同じです。

本人が、

「部下との関係を変えたい」

「もっと部下を育てたい」

「自分のマネジメントを変えたい」

と思っていなければ、

いくら立派な「釣竿」を渡しても使わない。

研修担当者が、

「これは素晴らしい手法です!」

と言って配って回るだけでは、人は変わらないのです。

この経験は、その後の私の研修設計に大きな影響を与えました。

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そして、もう一つの疑問が生まれた

ただ、私の中にはもう一つ、引っかかるものがありました。

コーチングでは、

「君はどう思う?」

と問いかける。

本人の中にある答えを引き出していく。

これは素晴らしい。

でも――。

そもそも、答えを考えられる状態ではない人はどうするんだ?

仕事で傷ついている。

自信を失っている。

将来が不安だ。

人間関係に悩んでいる。

何をしたいのか、自分でも分からない。

そんな人に、

「で、あなたはどうしたいですか?」

と質問しても、

「それが分からないから困っているんです」

となることがあります。

ここで私は、

「引き出す」より前に、何か必要なのではないか

と考えるようになります。

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コーチングから、カウンセリングへ

そこで私が学び始めたのが、

カウンセリング

でした。

コーチングで大切にしてきたのは、

傾聴・質問・承認。

そしてカウンセリングを学ぶ中で、私が改めて重要だと感じたのが、

傾聴・受容・共感。

ここで私の中で、人財育成に対する考え方が少し変わります。

「どうすれば、この人を動かせるか」

ではない。

「どうすれば答えを引き出せるか」

だけでもない。

その前に、

「この人は今、何を感じているのだろう?」

がある。

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これは、あの女性部下の言葉につながっていた

ここで、序章に書いた女性部下の言葉が、もう一度よみがえってきます。

「あなたは、話を聞いてくれるだけでいいんです!」

当時の私は、

「話を聞くだけなら、他の人に話せばいいじゃん😂」

と思った。

でも、カウンセリングを学んでいくと、

「話を聞くだけ」の意味が変わってきます。

ただ黙って聞くことではない。

相手を受け止める。

否定せずに聴く。

その人が感じていることを理解しようとする。

つまり、

受容・共感・傾聴。

彼女が求めていたものを、私はずっと後になって理論として学んだわけです。

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ティーチング→コーチング→そしてカウンセリング

振り返ってみると、私自身の人財育成の歩みは、

ティーチング
↓
コーチング
↓
カウンセリング

と変化してきたように思います。

ただし、前のものを捨てたわけではありません。

教えるべきときには、教える。

本人に考えてもらうときには、質問する。

そして、その前に受け止める必要があるときには、まず聴く。

使い分けるのです。

管理職に必要なのは、一つの技法ではない。

相手の状態を見ながら、

教えるのか。
問いかけるのか。
受け止めるのか。

を選べることなのだと思います。

⸻

しかし、私の試行錯誤はまだ終わらなかった

コーチングを学び、

カウンセリングを学び、

人を動かすことより、人を理解することの大切さも分かってきた。

それでも、私はその後もう一度、大きな壁にぶつかります。

40代以上、そして退職が見えてきた人まで含むミドル世代を、

どうすれば、もう一度元気にできるのか。

当初、私たちは「モチベーションを上げる」ことを考えました。

しかし、私はだんだん疑問を持つようになります。

そもそも、他人が人のモチベーションを上げることなんてできるのか?

この疑問から、約1年間の研究が始まります。

そして最終的に、

「モチベーション研修」をやめる。

そこから生まれたのが、

「強制しない――自分から動く」パワーアップ研修

でした。

この連載の一つの大きな到達点です。

https://note.com/bostonmio/n/n1a1ac3f78021

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富士 翔大郎

人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民

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