AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて解説する。今回はその5つめ──「意味化」。

トヨタ自動車は近年、自社のアイデンティティーについて大きな更新をしました。すなわち、製造業から「モビリティカンパニー」への脱皮を宣言したのです。
かつて同社は「故障が少ない、燃費がよい、お手頃価格」という価値を本質として引き抜き、その結論としてエコノミーカーをつくって売りました。昭和時代の製造業として、そのように具体次元に寄った価値抽出は当然のものでした。しかしいま、引き抜く本質的価値を「モビリティ」としたのです。となると、売るべきはモビリティのサービスとなります。

人が便利に移動できること───これがモビリティの価値です。この価値提供を事業として具現化する業種はいろいろ出てきます。自動車メーカーはもちろん、バス会社、タクシー会社、鉄道会社から、駐車場会社、地図会社、そして電車乗り換え探索アプリ開発会社などまで。

こうしたさまざまな業種が参入するモビリティ産業において、どこが支配的な立場でビジネスをすることができるでしょうか。それはモビリティ価値を統合化してサービス提供できるプラットフォームを構築したところです。自動車メーカーはよい品質のクルマをつくっていればよい、バス会社は安心・安全な輸送サービスをやっていればよい、といった具体次元に硬直的に留まってしまうと、モビリティ産業を手段提供として支える側(いわば供給側)に組み込まれてしまうでしょう。
目的となる本質的価値をつかみ、プラットフォームを構築し、そこに供給業者を組み入れ、顧客を囲い込むところがビジネスの勝者となる時代が来ています。

思考ワークチャレンジ ~中核的価値の抽出トレーニング
それでは、価値を引き抜くトレーニングをやっていきましょう。世の中にはいろいろな職業、職種、業界があります。それらは何かしら具体的なモノやサービスを売っています。しかし、そこで思考を止めてはいけません。そのモノやサービスは最終的に何の価値をユーザー/購買客に届けているでしょうか──?
【ワーク概要】
下のワークシートを使用。
〈記入①〉特定の職業・職種・業界をピックアップし、
〈記入②〉それが売っている具体的なモノ/サービスを書きます。
〈記入③〉そして、その売っているモノ/サービスの中核にある価値が何であるかを考えてください。

このワークに対し、私が主宰する「概念工作塾」の受講生たちがどんな答えを出したか。その一部を下に掲示します。


変化の時代を生き抜くために「不変の軸」が要る
私たちはいま、変化の時代に生きています。ましてやその変化はますます加速し、複雑化し、あいまいで不安定になっています。そんな外部環境に対応するために、当然私たちは変化を試みる。知識や技術を変えていく、組織や市場・顧客の要求変化に対し、出すべき成果(物)や表現(物)も変えていく。そのためにKPI(重要業績評価指標)など、数値目標を綿密に立ててその達成を目指す。
たしかにこれらの対応は重要ではあるものの、これらは表層/処し方における対応です。これだけに追われていると、結局、相対的な競争に終始するだけで、独自の世界を構築できず、漂流し、埋もれてしまいかねない。
そうならないために私たちは深いところで不変の軸を持たねばなりません。その変えない軸こそ、抽象次元のものであり、在り方であり、目的的なもの(意味や価値、想い、世界観の実現)といえます。
AI時代 人間に残される思考は「概念的思考」になる
2026.08.15
2026.08.17
2026.08.24
2026.08.29
2026.09.01
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。組織・人事コンサルタント、概念工作家、『源流の森ブックス』編集発行人。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。
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