AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて解説する。今回はその5つめ──「意味化」。
仕事・事業にどんな意味や価値の背骨を通すか
事業現場では、個人も組織も日々「目標」の達成に向かって走っています。例えば──「今期売上高は●●円を目指す!」「対前年度●%の利益アップ!」「市場シェア首位奪還!」など。これら数値目標は職場にあふれています。
目標に対し「目的」という概念もあります。目的はより大きな概念で、それをなぜやるかという意味を含んだものです。意味とは「意(こころ)の味わい」と書きます。また、意味の下地には理念や信念といったものがあります。こうした精神的価値が目的のなかに含まれています。
しかし自分にとっての精神的価値を考え、それを研ぎ澄ませていく作業はむずかしい。それを具現化するための行動はさらにむずかしい。そのため、私たちはややもすると与えられた目標に働かされることに慣れきってしまい、目的や意味を考えることをしなくなります。
自分の仕事・職業に、そして担当する事業にどんな意味や価値の背骨を通すか──。これこそAIではなく、人間でしか答えの出せない深い問いとなりますが、コンセプチュアル思考はこの「意味化」の作業を扱う思考です。
事業を価値次元でとらえる
私たちはみずからの事業を考えるとき、まずは具体的次元からみはじめます。機能や仕様(スペック)はどうか、価格はどうか、デザインはどうか。そして競合他社と比べて、それらの項目で優位に立っているか、など。
確かにこれら現物的、技術的、実務的なことをどう処理していくかは重要ですが、その次元に留まっているかぎり、その事業は小さな枠のなかで縮こまるリスクがあります。そうならないために私たちは価値次元に目線を上げ、事業をとらえる必要があります。

経営学者のピーター・ドラッカーはこう言っています───
「ガスレンジのメーカーは、競争相手は同業他社と考える。しかし、顧客たる主婦たちが買っているのは、レンジではなく料理のための簡単な方法である。電気、ガス、石炭、木炭のいずれのレンジであろうと構わない」。
そう、消費者が求めているのは「熱調理の簡便化」という価値であり、それが最終目的です。ガスを使おうと電気を使おうと、炭だろうと、それは手段です。
事業の主目線を抽象次元・目的に置くのか、具体次元・手段に置くのか、これによって事業の発想や手立て、世界観は大きく異なってくるでしょう。

最高級ホテルブランドの1つであるリッツ・カールトンにとって競合は、他のラグジュアリーホテルにかぎりません。彼らが事業目線を「ぜいたくで上質な心地」という価値に置くとき、競合はスポーツカーやエステサロン、高級腕時計にまで広がってきます。そのように目的とする価値から事業や市場をながめると、そこには異なった景色が現れてきます。
AI時代 人間に残される思考は「概念的思考」になる
2026.08.15
2026.08.17
2026.08.24
2026.08.29
2026.09.01
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。組織・人事コンサルタント、概念工作家、『源流の森ブックス』編集発行人。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。
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