調達プロフェッショナル育成から越境人材活用へ

2026.07.29

経営・マネジメント

調達プロフェッショナル育成から越境人材活用へ

野町 直弘
調達購買コンサルタント

2010年頃からでしょうか、それが変わってきました。リーマンショックを契機にマネジメントからの調達購買部門への要請がコスト削減やサプライヤマネジメントなどに拡大してきたのです。また、その後もCSRやサステナビリティなど、調達購買部門への期待は益々広がり、調達購買人材は専門職としてみなされるようになってきました。 「プロフェッショナル」「スペシャリスト」「マネジメント」――この3層で、調達購買人材の育成は組み立てられてきました。ところが、この3層に加え、調達購買部門に、新たな第4の層である人材群が、必要になっています。 それが、DX、事業企画、サステナビリティ、コーポレートコミュニケーション、リスク管理、法務、人事といった他の専門性・機能を持つ、「新たな専門職群」です。

興味深いのは、こうした人材の獲得の仕方です。外部からのキャリア採用も選択肢の一つですが、特にDX人材などは、外部からの採用競争が激しく、簡単ではありません。そこで増えてきているのが、もともとDXや法務、サステナビリティなどの専門部署に所属していた人材を、数年間、調達購買部門へ異動させるというやり方です。

こういう人材や人材キャリアの積み方を「越境人材」というようです。越境人材の定義は、「所属する組織や部門の枠組みを越えて異なる環境(他社、他部門、異文化など)での経験を積み、そこで得た新たな視点や専門性を元の組織に還元して変革をもたらす人材」のことであり、「越境人材」の活用は今や様々な企業で試されています。

思い返してみると、「越境人材」の活用的な視点は、従来から調達部門においてもありました。例えば、ある自動車会社では偉くなるためには、調達部門の経験が必須という暗黙のルールがある、と聞いたことがあります。また、調達購買部門のエリート人材育成のために、数年海外現地法人のマネジメントを経験させる、という事例も少なくありません。また、人の異動という視点ではありませんが、調達部門内に人事機能を持ち、人材採用、育成、人材配置などを専門的に行う機能を持たせている企業も少なくありません。

私が知っている面白い事例としては、コーポレートコミュニケーションの専門家を調達部門に越境させている企業です。この企業は越境人材の活用で、調達購買部門の活性化と社内での地位向上につなげることができました。

このように、越境人材の仕組みは今や欠かせないものになっているのです。

異動してきた越境人材は、調達購買部門での専門性強化に貢献します。と同時に、その人材自身も、調達現場でサプライヤ調整力やネットワーク構築力、マネジメント経験を積むことができ、専門人材としてのキャリアに厚みが増すのです。

つまり、「調達購買部門が人材を借りる」という一方通行の関係ではなく、「双方にとってプラスになるキャリア形成」として設計されています。

自分の専門性(ホーム)を保ったまま、一定期間、別の部署(アウェイ)に身を置き、そこでの経験を持って元の専門領域に戻っていく。単なるジョブローテーションとは違う発想です。

この仕組みを機能させる上で、特に重要だと感じるポイントが二つあります。

一つは、「戻った後のキャリアが不利にならない保証」です。優秀な専門人材ほど、「調達に行っている間に、自分の専門領域での評価機会を逃すのではないか」という不安を持ちます。この不安を解消
できなければ、良い人材ほど越境してこなくなります。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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