世界をまたにかけて活躍するビジネスパーソン、いわゆるグローバルエリートは、「解は外にあり、課題はいつも中にある」と考えています。 この姿勢を全うし、培う力となるのが、「課題発見力」です。彼らはなぜ正しい課題を見抜けるのか。その力はどこで培われているのかを探っていきます。
日本の会社では、失敗は個人の責任にされがちです。「あいつだから失敗した」「社長が飲み歩いて遊んでいたらしい」などと、責任をなすりつけてしまうのです。しかし、飲み歩いていても、不真面目な性格と言われていても成功する人はいます。それは本質的課題でも何でもなく、単なる悪口や感情論に過ぎません。
重要なのは、失敗体験から何をどう学ぶかです。日本では失敗をネガティブなものと考える傾向があり、失敗には目をつぶり、忘れてしまってもいいと考える人もいます。しかし、本当の成功者は、失敗を価値ある学びと考えます。自分が今取り組んでいる課題が本当に解くべき問題なのか、常に自問し続ける姿勢が求められるのです。
グローバルエリートの強さは「リスクコントロール力」にある
グローバルエリートが本質的課題を発見する力に長けている理由のひとつに、リスクコントロールの巧みさが挙げられます。ウォーレン・バフェット氏は、バークシャー・ハザウェイのトップを退任する前、5年にわたって日本の5大商社の株を買い増しし、長期保有すると語りました。当時「利益が出ているのに不当に株価が安い」「こんな立派な会社が放置されているのはもったいない」といった発言が取り沙汰されたことは記憶に新しいでしょう。
本当の理由はわかりませんが、私は、日本の5大商社が持つリスクコントロール力ではなないかと考えています。投資銀行の目線で見た場合、企業を「一流」とみなす決め手として、リスクコントロールの巧みさが非常に大事なファクターになります。想定外の出来事が起きたときにリスクコントロールが上手にできる会社こそが、タフな会社なのです。
世界のグローバル企業の中でも、日本の総合商社は屈指のリスクコントロール力を誇ります。例えば、イランとイスラエル双方とビジネスを展開していますし、ロシアや中国とも、的確なリスクコントロールのもと、世界の情勢に応じた適切な判断を行っています。場合によっては、高リスクな商品取引に大きな投資をすることもあります。先物取引のような高リスクな領域に、普通の会社は手を出すことをためらいますが、総合商社は実行に移す胆力を持っています。
バークシャー・ハザウェイにとって総合商社ほど頼もしい会社はなかったのでしょう。総合商社はまさに外洋で生きるグローバルエリートです。ウォーレン・バフェット氏は日本のグローバルエリートを高く評価してくれたのだと、私は見ています。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
