【若者はなぜ3年で辞めるのか】の続編。今、どこの書店でもけっこう売れているようです。前著で昭和的価値観とそれに基づいたシステムの弊害、そこから外へ出る若者を描いた著者:城繁幸氏ですが、今回は、更に踏み込んで、昭和的価値観とそのシステムがもたらしている社会問題と、若者の中に芽生え始めている平成的価値観、を明らかにする試みとなっています。
著者は必ずしも、欧米型の実力主義のシステムを輸入することを求めているのではないようです。
ゼロ成長、マイナス成長を前提としたシステムを組み上げることの必要性は、社会全体に必要であるということですよね・・・。企業もそこから逃げるな!と。
年金問題と同じで、右肩上がりを前提としたシステムは、若者にツケを回しているだけですから。
ただ昭和的価値観とそれを支えるシステムを維持するためだけに、被搾取者を次々と作り出すのは止めなさい、と言っていますね。
派遣社員などの非正規雇用者は、現在、やっている仕事に比して貰い過ぎている人々を支えるために、低賃金労働を強いられている。それは変じゃないですか?と。
まあ、確かに大きな会社には、ほぼ何もしていない人もいます。派遣社員がバリバリ働いていて、という状況も多々ありますね・・・。
それは、本質的におかしなお話しです、と。
ただ、若者の中にも、昭和的価値観があって、大企業に入りたい、そのレールに乗って逃げ切りたい、という人はたくさんいる状況を危惧していますね。
前作に続き、主張は至極まっとうです。
ただ、改革をドライブするためには、今の既得権益を持っている人が、それを手放してくれるためのインセンティブがあるべきですが、そのアイデアは書かれていないですね。
自分の既得権益を手放すのって難しいですからね・・・。
昨日のビジネスサテライトで、年金問題で、老人でもお金がある人は、支給を減らそう、といったことをコメンテーターの方が言っていました。それを納得させる理屈は、「待ったなしだから」ですね。
このままでは社会システムが崩壊する。だから、既得権を手放してくれませんか?と言われて、「ハイそうですね」とは、なかなかならない気がしました。
タマゴボーロで有名な竹田和平さんは年金を返上しているそうです。お金持ちだから当然だと思いますか?なかなか自分の権益を手放すのは難しいです。竹田和平さん、心から尊敬いたします。
話しを元に戻すと、既得権益の排除と機会平等の仕組みが、「いっせいのせ」で、同時にできるとよいのですが、どうしてもタイムラグが生じます。そのタイムラグの間は、煮え湯を飲まなくてはいけない。
コンサルタント失格かもしれませんが、私にも、彼らにどんなインセンティブを与えて既得権益を手放してもらうか、は見えませんでした。今の経営層は、彼らの世代の代表ですもんね・・・。
中高年の既得権を手放す代わりに、ビジネス教育機関の費用対効果を上げつつ、彼らに、大学などでのビジネス教育というかそういうものを受けてもらって、そういうものの学費などで優遇するぐらいしか思いつきません・・・。それを社会がキャリアアップとして認める下地作り、雇用促進とかね・・・。
しかし、もし本当に既得権益を自ら手放してくれたら、その世代は尊敬します。本当に。
「社会のために自らの権益を手放した志高き世代」として。
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若者はなぜ3年で辞めるのか?
2008.04.16
2008.04.09
2008.04.02
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。