2006年出版の本なので、今更という感じがしますが、仕事の都合もあって読んでみました。アマゾンのカスタマーレビューが167件もあり、それを読む限り、相当賛否両論な本なんだなあ、と思いつつ読んでみました。
この本のサマリーとしては・・・
「成果主義が浸透してきたと思われる今日この頃(2006年当時)であっても、未だに年功序列と終身雇用システムをバックグラウンドとする昭和的価値観が、社会全体に浸透している。だが、そのシステム自体は右肩上がりの成長を前提とし、若者の犠牲の上に成立するものであり、既にその前提は崩壊している。また、働くという行為は、やりがいという内発的な動機をベースとするはずなのに、このシステムはそれを押し殺すものである。働く理由に目覚め、かつ、このシステムにしがみつく老人のために低賃金労働を強いられることに気が付いた若者は、このシステムに支えられた昭和的価値観の外へと出て行く」
・・・ぐらいでしょうね。至極まっとうな主張です。
と、話しが終わってしまうので、本書の内容を交えつつ、このような状況の中で、未だ昭和的価値観に浸されている可能性がある企業での新卒採用や研修はどうあればいいのか?ということをちょっと考えてみようと思います。
現在は、空前の売り手市場、学生が会社を選べる時代が訪れています。この本によると、「就職氷河期といわれた1997年から2003年」に新卒だった私としては、非常にうらやましいです・・・。
問題となるのは、高いコストをかけて採用した若者が、内定辞退をしたり、すぐに退職することで、元が取れなくなってしまうことですね。
本書に登場する統計データ「厚生労働省:新規学校卒業就職者の就職離職状況調査」では、2000年には35%の新卒者が「3年以内」に辞めています・・・。1年目でも15%が辞めていますね・・・。これはすごい数字です。
それと同時に、産業能率大学の2005年度の新入社員を対象とした意識調査で、就職先として「年功序列制度を維持している会社」を挙げる人の割合が42%を越えている、とあります。また、公務員人気も依然として高く、「競争の時代だからこそ、安定したい」という声も紹介しています。
本書では、働く動機に目覚めた人々を「狼」、昭和的価値観を無自覚に信じている人を「羊」としていますが、おそらく、年功序列制度を維持している会社に行きたい人、公務員になりたい人は、「羊」なのでしょう。
ただ、35%もの3年以内に辞める人には、「狼」もいれば、「羊」もいるのではないかな、と・・・。
昭和的価値観に支配されつつ、昭和的価値観の中でのよりマシなレールを求め、辞めていく「羊」と、レールのない荒野へと、自分自身の内発的な動機に気が付いた「狼」。
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若者はなぜ3年で辞めるのか?
2008.04.16
2008.04.09
2008.04.02
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。