今どきのネットユーザーでアマゾンの名前を知らない人は、ほぼ一人もいないだろう。では、アマゾンが狙っていることは何だろうか。アマゾンが秘かに、しかし着実に進めているもの、それは革命ではないか。
衣食住遊学健医といった切り口で考えれば、今のところ揃っていない
のは食品、住宅、医薬品といったところだろうか。とはいえこうした
アイテムをアマゾンが将来的にも扱わないという保証はどこにもな
い。
またアマゾンは書籍一つをとってみても、従来では考えられなかった
マーケットを開拓した。マス・ニッチ・マーケットである。従来なら
単なるニッチで終わっていたマーケットを、ネットの力で束ねること
によってビジネスとして採算の合うマーケットに仕立て上げてしま
う。あるいはネットならではの効率性を活用したロングテールマー
ケットを創造してしまう。いずれもアマゾンのシステムが開拓した
マーケットである。
その上アマゾンはシステムを常に改善し続けてもいる。たとえばリコ
メンデーション・エンジンである。このシステムが導入されたのは今
から10年ほど前のことだが、当時は画期的なシステムと評価され
た。もちろん現時点でアマゾンのリコメンドが画期的に優れている、
とは決していえないが、それなりにブラッシュアップされ続けている
ことは事実だと思う。
ほかにもアマゾンにはカスタマーレビューやリストマニアなるおすす
め表示システムがある。あるいは「なか見」サービスも取り入れられ
ている。ともかく商品をオススメする『おもてなし(中島聡さん風に
いえば)』を次から次へと繰り出してくる。当然、こうしたサービス
をバックヤードでは巨大なコンピューターシステムと膨大なプログラ
ムが支えているはずだ。
そして、アマゾンによる革命が静かに、しかし水面下で着実に進んで
いる証は、アマゾンユーザーの多くがアマゾンのサービスをネットの
スタンダードとして受け入れている事実にある。決済システムにして
も、アマゾンは常に改良を加えてきており、購買商品を決めてから決
済までの流れがとてもスムーズだ。少なくとも本に関しては1クリッ
クで決済ができて、たいていは次の日に届く、と思っている人が増え
てはいないか。
そんな芸当ができるのは、アマゾンがリアルな(具体的にいえば在
庫・物流などの)システムにも惜しみなく投資をしてきたからこそで
ある。にもかかわらず、アマゾンで買えば確実に安い(少なくともポ
イントがついて、その分だけ割り引いてくれる)。一定金額を超えれ
ば送料も無料となる。そして、仮に求めているのがとてもレアなモノ
だとしても、とりあえずそれがいまアマゾンが扱っているアイテムに
含まれていれば見つかる可能性は高い。
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