オリンピック女子体操の代表選手が、喫煙・飲酒をしたことにより、代表を辞任になった事件。それなりに耳目を惹くスキャンダルではあるものの、この措置を巡っての論争が続いています。意見は真っ向から対立していますが、著名人の多くが処分に批判的、一般人からの意見は処分に肯定的なものが多いという、分裂が起こっています。危機対応の視点で考えてみます。
・オリンピック代表という「夢」
アスリートにとってオリンピック出場と言えば、その競技の頂点を競う立場になった証明でもあります。人生を賭けて挑戦しても叶わない人がいくらでもいる、正に「夢」でしょう。代表処分という苛烈な裁断に反対な人は、「アスリートの夢を、喫煙ごときで断って良いのか」という、犯した罪と処分の重さがバランスしていないという点を上げるものが多いようです。
さらには「自分だって若いころはヤンチャしてたし、タバコなんざ中学時代から吸ってたよ」系、昔悪かった俺自慢も加わえた、タバコぐらいで夢を奪うなという論理がよく見受けられます。喫煙自体を擁護はしないまでも、今回処分の重さはおかしい。謹慎などもう少し軽い処罰で十分だという主張です。
一方、処分されることに肯定的な意見は、「ダメなものはダメ。そもそも法律違反(である喫煙・飲酒)など認められない」という正に正論です。処分に批判的な意見ですらも、喫煙しても問題ないというものは無く、誰もこの正論を否定することはできません。
しかしながら、世間ではやたらと正論を振りかざす「正論バカ」などと呼ばれる人や行為には、批判的トーンがつきまとっています。杓子定規に正義や正論を振りかざす行為も、そんなに褒められるものではないのではという空気感は存在します。
賛否激しく分かれる「論争」になるのもむべなるかな。
・誰が擁護し、批判しているのか
「アスリートの夢を奪うな」、「喫煙くらいたいしたことない」という処分批判派の多くは芸能人、政治家、一部アスリートから発信されています。あえて意地悪なくくりをつけるとしたら、いわゆる上級国民に属する人が多いのではないでしょうか。
特に昭和の時代に青年期を過ごしたであろう男性有名人中心に、喫煙なんてたいした罪ではない、代表をやめるのは重すぎるという意見が多く見られ、ついでに「俺なんざもっと子どもの頃からタバコ吸ってたよ」という、昔の悪自慢も入った意見を多数見ました。また、失敗は誰にもあるので、再チャレンジの機会を与えるべきという、厳罰すぎる措置への反対もあります。
こうしたネットニュースやXなどでの発言には、一般人からは、ダメなものはダメ、法律違反という指摘だけでなく、「ただの高校生ですら、タバコが見つかって退学処分くらったりするのに、オリンピック代表という特別な重責を担う者を一般人扱いするのはおかしい」という、立場の違いに切り込んだものもあります。
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2015.07.17
2009.10.31
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。