前回の3つのマネジメントの中で、サプライヤマネジメントは昨今重要視されています。 一方でサプライヤマネジメントだけでなく、自社製品・サービスの競争力強化のために川上から川下までのバーチカルチェーンの中でどこを手の内にしていくか、ということが今後より重要視されます。私はこれをバーチカルチェーンマネジメントと呼んでいます。
バーチカルチェーンマネジメントの事例は、現在でも多く上げられます。
例えばテスラは、垂直統合型のモノづくりで有名な企業です。バッテリーやバッテリーの主要材料について、鉱山会社と直接契約を結んだり、半導体不足の際に内製でプログラミングをすることで、半導体不足を乗り切ることができた、などは有名な話でしょう。
同じ自動車会社でもトヨタ自動車は自社をモビリティカンパニーと捉え、川下事業では、カーシェア事業や、カーリース事業、カーナビやカーナビへの情報提供など幅広く川下事業への展開に力を入れています。
一方で、自動車会社のサプライヤである製鉄会社も、原料炭の確保のために、自社鉱山比率を高めるなどの戦略を取り始めているのです。
また、今後より重視される「サーキュラーエコノミーの実現」ですが、これにはリサイクル材の供給元の確保が必須となります。リサイクル材の供給元はバージン材とは全く異なるケースが多いです。例えば樹脂などでは、回収し、分別し、再利用のための加工が必要となってきますし、それらの機能を持つバーチカルチェーンの中のプレイヤーもバージン材から変わります。
従来はリサイクルはコスト高になってしまい、競争力につながりませんでしたが、バージン材の供給難や社会的な要請から、環境負荷の低下が競争優位になる時代となり、そういう背景下、バーチカルチェーンの再構築が、たいへん重要な時代になりつつあるのです。
これらの事例のように、バーチカルチェーンマネジメントは非常に重要な概念であり、既に多くの取組み企業があることも、理解できます。
バーチカルチェーンマネジメントで重要なことは、何を手の内に持つかです。チェーンの中で重要な機能を自社で囲い込むことで、競争力強化につなげていきます。そのためにはM&A、JV、出資、戦略的提携、人的関係強化、など様々な方法が上げられます。
これらの取組みは、全社の事業戦略、内外製戦略、コンポーネンツ戦略に沿って進めるべきものであり、企業としての重要な意思決定となります。一方で、多くの企業は高度な縦割り組織となっていることが多く、多くの日本企業では、バーチカルチェーンマネジメントの戦略を企業横串の視点で策定できるような部門は存在しません。
この点から、企業においては、バーチカルチェーンの中でどのような戦略をとっていくのか、を策定する機能・役割を持つ人や組織を、まずは、設置、育成すべきです。
また、具体的な取組みについては、従来のサプライヤマネジメントの取組みの延長として、調達購買部門も主導していく必要があります。バーチカルチェーンマネジメントのコミュニケーション窓口として、調達購買部門が関係性強化を主導的に進めていく期待が高まっているのです。
このようにサプライヤマネジメントからSCMへ、また、そこからバーチカルチェーンマネジメントの最適化へ、と企業における外部資源の優先順位付けと取込みや、今後一層重要となり、企業の競争力の源となってくるでしょう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。