前回の3つのマネジメントの中で、サプライヤマネジメントは昨今重要視されています。 一方でサプライヤマネジメントだけでなく、自社製品・サービスの競争力強化のために川上から川下までのバーチカルチェーンの中でどこを手の内にしていくか、ということが今後より重要視されます。私はこれをバーチカルチェーンマネジメントと呼んでいます。
これらの点が、従来の「サプライヤマネジメント」から「戦略的サプライヤマネジメント」への発展と考えていました。しかし、近年「戦略的サプライヤマネジメント」だけでは不十分な時代になりつつあるのです。
サプライヤマネジメントとは別に、自社のバリューチェーンの最適化という点から、サプライチェーンマネジメント(以下SCM)という概念でも改革は進められてきました。SCMとは、自社の調達・製造・流通・販売などの最適化を進める概念でしたが、その多くは販売と製造・流通の最適化を進めるものだったのです。
しかし、これはあくまでも自社の現在の製品・サービスを前提とした調達・製造・流通・販売などのバリューチェーン全体の最適化が目的でした。
昨今、製品・サービスは複雑化、複合化しており、最終製品を構成する要素には多くの技術が含まれ、これらを全て自社で網羅すること自体が難しくなっています。例えばスマホですが、構成部品一つ一つを製造・販売する企業があり、それらの構成部品ごとにサプライチェーンがあります。
また、自動車製造販売では、最終製品の販売だけでなく、カーシェアやカーリースなどの事業形態が発展し、カーナビから発展したコネクテッドなビジネスが川下に広がってきました。
このように、従来の自社の製品・サービスを前提としたサプライチェーンの最適化だけでなく、川上や川下まで含むバーチカルなチェーンの最適化が求められているのです。
そういう点から、私は「バーチカルチェーンマネジメント」という表現が適切だと考えます。
「バーチカルチェーンマネジメント」とは、自社の製品・サービスの川上から川下まで広く捉え、その中で、自社の製品・サービスの競争力を強化するために、どのような事業を手の内に
するか、を再設計するものです。つまり、自社の製品・サービスの競争力強化のために、供給チェーン内の複数の段階を所有または制御することです。
業界によっては、川下側の流通販売が圧倒的な力を持ち、川上側へ影響力を持っていました。一方で、多くの事業・製品は深いサプライチェーンになっており、一般的には、最上流である素材・原材料メーカーの影響力が強くなっています。
しかし、これは製品・事業によって異なります。自社の製品・事業をバーチカルに捉え、その中で何を手の内におき、何を除外していくのかを検討し、戦略に落とし込み、競争力を最大化することが、バーチカルチェーンマネジメントです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。