最近、この本のヒットのせいか、地頭という言葉が一般にも普及しました。私も、面接の時に、「テニスラケットは日本に何本あると思いますか?」と聞かれたことがあります。コンサルタントであれば、いわゆる地頭を使った、こういう思考スタイルは取らざるを得ないのですが、一般企業でどう活用するか?に関して、私は相当に苦労しました・・・。
みんな「賢い」と言われたい、という欲求があって、できれば短期間で劇的に、と思っているということは、こういった本がベストセラーになる度に、そのサブタイトルの見た目の都合のよさ、かっこよさを見るたびに思います。
「R25」を出すに際して、「行ける」という確信を得られたのは、みんな、日経新聞を読んでいます!と言いたいけど、実際には読んでいないことがわかったこと、だとR25の編集長は言っていました。
「せめて、考えようよ」、というメッセージとして、R25は作っていたそうですけどね。この本も、「せめて、考えようよ」、というメッセージであればいいんですけどね。そうではなさそうです。
あと、この本で決定的に間違っていると思うのは、情報の入力量=処理能力という前提を語っていないことですね。
コップの中の水の量が、こういう能力だったとして、コップが裏返っている人に水を注ごうとしても、注げません・・・。コップが裏返っている人が、どんなに訓練をしても、3分で答えを出せるようにはならないのでは?と思います。
情報の入力量がある閾値を越えている人のコップは表になっていると思います。でも、たいていの人のコップは裏返っていると思います。
まだ、勝間さんの自分をグーグル化する、という書籍のほうが、良心的だとは思います。ひたすら入力を増やせ!というところは言っていますから。ただ、あれを実践するのは、相当の意思の力と経済的余裕がいるとは思いますが。
つらつらと書いた批判をまとめると、「良心的でない」、に尽きるでしょうか?
この力は、日々の業務にどう活かされる?というところで、ちょっと高いレベルを想定してしまっています。たいていの日本企業で、たいていの平社員、ちょっとしたリーダーの日常業務で活きるか疑問です。
あと、この本の前提としては、「情報の入力量が一定値を越えている人」が、その膨大な情報エンティティを扱うに際して、有効なシンキングメソッドを提案します、というところだと思います。これを言わずに、頭がいいとは、「物知り」と「機転が利く」と、「地頭がいい」と定義されてしまうと、けっこうきついですね。
そして、繰り返し語られるシンキングメソッドと同じようなことが書いてあります。短期で劇的に考えられるようになるのでは?という人の気持ちを刺激しつつ。でも、そんなことはありえない。でも、ありえないとは書いていない。
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2008.06.28
2008.12.06
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。