昨年の11月29日に公正取引委員会が、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を発表しました。これは、これまでの日本企業の調達購買業務のあり方をひっくり返すほどの内容となっており、多くの企業が対応に苦慮しています。 しかし、我々はインフレ経済に慣れていません。 それではインフレ時代には、どのような調達購買をしていけばよいでしょうか。
昨年の11月29日に公正取引委員会が、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を発表しました。これは、これまでの日本企業の調達購買業務のあり方をひっくり返すほどの内容となっており、多くの企業が対応に苦慮しています。
特に「事業者が取るべき行動 /事業者に求められる行動」としてあげられている12の行動については、その具体性と共に、今までの常識から外れる内容が多く、驚きを隠せません。
一番驚いたのは、受注者が取るべき行動③「労務費上昇分の価格転嫁の交渉は、 (中略)、発注者の業務の繁忙期など受注者の交渉力が比較的優位なタイミング などの機会を活用して行うこと。」です。
発注者が忙しい時を狙って交渉しなさい、と。。どういうことなのでしょうか。今回この指針の発表元として公正取引委員会とともに書かれている「新しい資本主義」を実現したいのでしょうか。(本当に資本主義か?)
色々とツッコミどころはあるものの、政府にとってみると、大企業が賃上げしたものの、それが経済全体に波及してこない状況を懸念してうった手と考えられます。しかし、あまりにも雑なやり方であり、将来的には日本企業の競争力を損することにもつながるのではないかと憂いてしまいます。
今回は労務費の転嫁ですが、値上げの動きは、一昨年前からの様々な市況高騰、円安などによる原材料やエネルギー費用の高騰から始まったものです。そして、昨年から、労務費の高騰へとつながってきました。
考えてみると、今現役世代で仕事をしている人達の殆どは、そもそもインフレ経済というものを経験していません。年次の原価低減やコスト削減は当たり前であり、値上げという言葉を口に出すことも憚れる環境下で育ってきた世代なのです。
実際に、私も現役バイヤーの頃には、値下げの決裁は課長、だったにも関わらず、値上げの決裁は、なんと副社長決裁でした。実質、値上げ決裁は化学製品で原油価格やナフサ価格と連動して、上げる位だったと記憶しています。
つまり、我々はインフレ経済に慣れていないのです。それではインフレ時代には、どのような調達購買をしていけばよいでしょうか。
インフレ時代には適正な値上げをしていく必要があります。そのためには、適正な値上げ幅を見極める必要があるでしょう。また、適正な値上げ幅を見極めるということは、コストアップ計画を予算化する段階でも必要となります。
今までは、バイヤーは毎期コスト削減をこういう戦略で進めていこうと自身で戦略はたてるものの、そのベースとなる数値目標などはサプライヤとの対話の中から、計画に落とし込んでいくのが一般的でした。懇意にしているサプライヤに「来年はどの程度値下げできる?」と聞き、発注量の拡大、MOQ/LTの見直し、生産性の向上、VAVE、などのネタで、どれ位いけるか、相談しながら計画していました。ところが、「来年は、どれくらい値上になりますか?」など、聞くことはできません。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。