今頃、何でコスト削減なの? 時代はインフレであり、成長と賃上げをいかに好循環していくか、でしょう? しかし、そういう時代であるからこそ、従来のサプライヤ交渉による単なる単価の削減ではない、コスト削減2.0が求められているのです。
ここ数年、調達購買部門はコスト削減に取り組むことができずに、日々の様々な値上げ要請に対して、如何に値上げ幅を粘り強い交渉によって抑えていくか、にフォーカスせざるを得ない状況になっています。
様々な市況の高騰、ユーティリティ費用、物流コストの値上げ、それに加え、円安による輸入価格高騰や賃上げによる人件費の高騰などで、コスト削減という言葉は聞かれなくなりました。それどころか、政府主導で、成長と賃上げの好循環を求めていくことや、マルチステークホルダー方針や、パートナーシップ構築宣言などに見られるような取引先との関係性見直しや、公正取引委員会による値上げ要請に応じない企業名の公開など、あたかもコスト削減をタブー視するような風潮があります。
果たしてこれがよいことなのでしょうか。
2014年末に書いたメルマガで、私は調達購買部門は今後、サプライヤとの協業やサプライチェーン全体でのサステナビリティ確保などの役割が高まり「コスト削減からの脱却」が改革のテーマとなる、と書きました。また、実際にそういう時代になっています。
しかし、調達購買部門の主業務は外部調達におけるQCDの確保あり、とりわけコストの最適化であることは不変です。一方で、コスト削減(最適化)手法は時代によって進化してきたと言えます。昭和時代は主にネゴシエーション中心であり、量が増えたから安くしてください、といった単純ネゴによるコスト削減手法が主流でした。
平成時代は、相見積、コンペ、ソーシングといった、いわゆる「安いところから買う」という手法が進んできました。これは、欧米型調達購買手法の展開であり、その前提としては、集中購買やサプライヤの集約などによるボリュームメリットの追求があげられます。また従来は決まったサプライヤから買う、というやり方だったのに対して、グローバルで新しいサプライヤを探索し、新規サプライヤを入れた競争環境の整備を行うのも、平成時代の代表的なコスト削減手法だったでしょう。
いずれにせよ、昭和時代も平成時代も主となったのは、会社を代表する調達購買部門のバイヤーとサプライヤの営業との間での交渉による単価の削減、が主たるコスト削減手法でした。その後、特に日本国内では「開発購買」というコンセプトで開発上流段階で調達購買部門が関与、提案し、仕様の標準化や、VE・VAなどの活動を進めることが、一部の業種中心に進みましたが、多くの企業で、なかなか上手く進まなかったのが実態と言えます。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。