日本企業における調達購買部門への対応の代表的な取組みが「何とかしろ!」でした。 しかし、昨年頃から「何ともならない」状況が続き始めています。「何とかしろ!」の発想からは何も生まれません。経営トップからの意識改革が必要となります。
常務が責任を持って何とかする、と発言されたので、まだ若かった私はどんな素晴らしい解決策があるのだろう、と期待していたのです。しかし、経験のある方は分かると思いますが、工期短縮の検討などは、既に、どこの企業もやっており、細かい工程表とにらめっこしても、短縮の余地など、殆どないケースが多いもの。また、いくつもの工程が並行して走っているので、ある工程の期間を、どうにか短縮しても、他のボトルネック工程が短縮出来ない限り、全体の工期短縮は図れません。
実際に、その時も、私は部品サプライヤだけでなく、細かな工程短縮の検討のため、金型屋さんや木型屋のおやじまで、打合せに来てもらいましたが、「これ以上の工期短縮は難しい」というのが参加者の意見でした。
ところが、その場で、常務がお願いしたのは、「うちの仕事を優先してくれないか」だったのです。結局、工期を短縮するためには、他社の仕事の代わりに自社の仕事を入れてもらうしかありません。何とかするというのはそういうことであり、他社の仕事を遅らせて、うちの仕事を優先してもらうことで納期を短縮させるという方法だったのです。
そこには、何か新しいやり方やブレークスルーなどもなく、単に「(うちの仕事だけ)何とかしてくれ」と常務がお願いしたわけです。ところが、結論としては希望納期に間に合わせることができました。
こういうやり方を、納期が間に合わない「何とかしろ!」のケースでは調整してきたのですが、今は、どの企業も入手困難の状況は同じであり、他社に優先して、自社の供給をお願い、というのは、通用しない状況になってきてます。
また、原材料の高騰についても、製品転嫁できないから「何とかしてくれ」の対応は既に困難となり、自社の売価への転嫁が求められるようになったのです。
「何とかしろ!」では「何ともならない」時代になりました。経営トップや調達部門長は意識を変えなければなりません。
原材料高騰に対しては、全社で協力し、顧客への値上げを説明し、理解してもらい、売価への反映を行っていかねばならないでしょう。そのためには、営業部門だけでなく、調達購買部門や物流部門、生産部門や原価管理部門などの協力が必要になります。また、そのための体制整備や意思決定のための仕組みづくりが必要となるでしょう。
供給不足や納期遅れに対しては、日頃からサプライヤに有利に扱ってもらうための関係性づくりや、代替品採用の意思決定のスピードアップ、新規開発段階から調達性の良い部品の採用などを全社で取り組むための仕組みづくりなどが、必要となります。
このように、2023年は「何とかしろ!」からの脱却を進めていく時期になるでしょう。既に企業業績を見ると早期に「何とかしろ!」からの脱却ができ、サプライチェーンを柔軟に構造改革する準備を進めている企業も少なくありません。多くの企業がこの旧態からの脱却のため、「何とかしろ!」的な発想からの意識改革から進められることを、期待してします。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。