2022年は企業経営における歴史的転換点になったかも知れません。GAFAなどの巨大ITプラットフォーマーによる支配が終わり、サプライチェーンの構造改革や調達改革などで強みを持つ企業が、業界内でも好業績を上げる時代になりつつあるのです。
テスラの強みは、自動車業界内での圧倒的な垂直統合型モデルにあります。近年の供給不足に対しても、半導体の内製化などを速やかに適応可能にしています。また、テスラは最も川上である鉱山会社との関係性強化や、代替材料の採用などを積極的に進め、サプライチェーンの
構造改革を柔軟に取り組んでいるようです。
最後はダイキン工業と三菱電機です。
三菱電機の空調・家電事業の2022年度第二四半期決算は売上が6627億円となり、前年同期から1.1倍に伸びていますが、営業利益は大幅な減益となり、前年同期は583億円だった営業利益が、246億円に沈み、約58%の減益となっています。一方で、ダイキン工業の2022年度第二四半期決算は、売上高は前年同期比30%増の2兆198億円に、営業利益も前年同期比15%増の2217億円に伸ばし、共に過去最高です。営業利益の増減要因を見ますと、原材料・物流の高騰で(-940億円)にも関わらず、売価(値上げ、+940億円)と拡販(+454億円)、コストダウン(+220億円)の施策で取り返しており、増益を実現しています。
ダイキン工業は2023年度中に、有事対応で中国製部品が無くてもエアコンを生産できるサプライチェーン(供給網)を構築する、と発表しており、中核機能にかかわる部品の内製化や、取引先にも中国外での生産を要請するなどの取組みを行っています。ダイキンは2217億円の営業利益のうち、拡販で454億円、売価アップで940億円と合わせて1400億円近く増収につなげており、モノが買えない時代でも供給確保や原材料価格高騰の売価反映が上手くできて
いることが分かるでしょう。
このように、同じ業種の企業業績ですが、とても対照的なことが分かります。また、3業種の好業績企業3社ともに、サプライチェーン改革や調達改革を積極的に進めているという共通点があります。
もちろん、業績は様々な要因の集約結果ですので、全てサプライチェーン改革や調達改革で説明できるわけではないでしょう。
しかし、これはたまたまなのでしょうか。
私は、これらの企業事例を見ても、企業経営におけるサプライチェーンの重要性が増していることは間違いないと考えます。前述した3社の好業績企業が意図してサプライチェーンや調達改革を実施しているとは必ずしも言えまえん。しかし、環境変化に合わせて、柔軟にサプライチェーンの構造改革を進めることが、経営面で求められ始めていることは間違いないでしょう。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。