日本企業の調達購買業務のDXはあまり進んでいません。 今後調達購買業務のDXを推進していく上での課題やポイントについて、3回にわたって述べていきます。
そのため、見積依頼~取得業務をDXツールで実施する必要性はあまり高くなく、依然として、メールにエクセルの見積依頼書兼回答書を添付して、業務を行っています。これでも、十分に業務は回るのです。
二つ目の理由としては、日本企業のDXに対する考え方が、上げられます。日本企業の場合、DX(IT活用)は、主に業務コストの削減を目的に行われてきました。ですから、多くの件数の処理が発生する、発注業務などの一部の業務を除き、調達購買業務のDXの必要性は、あまり高くなかったのです。
何故なら、現状の非効率な業務プロセスを、そのままDX化しても、大きな業務コスト削減効果がでないので、優先順位が低くならざるを得なかった、というのがもう一つの理由でしょう。
しかし、昨今状況が変わりつつあります。全社的なDXが叫ばれ始めたのです。全社DXの専門組織が設置され、それなりの投資が進みました。一方で、全社業務の中でもDXが進んでいない代表的な業務として、調達購買業務が槍玉にあがったのです。
また、昨今のDXのツールの進化も調達購買業務のDXを進めるきっかけになっています。
調達購買業務は、従来から要求部門、調達購買部門、検収部門、支払部門、サプライヤ、という関係者間の紙や伝票のやり取りを行うものです。ですから、一つのシステムから他システムへの転記や入力、照合などの業務が頻繁に行われます。これらの業務プロセスの自動化ができる、RPAは調達購買業務と親和性が高かったのです。
このように、昨今の全社的なDX推進などをきっかけに、調達購買部門が転記、入力、照合などの業務プロセスをRPA化する企業が多く出始め、一層のDX推進の呼び水になったと言えます。
取引系データについては、今後重要になってくるのは、リードタイムの短縮やプロジェクト管理の機能です。現状、調達購買プロセスはユーザーにとって、時間がかかりすぎる業務と言えるでしょう。
一方で、バイヤーは時間があれば、より良い購買ができると考えています。より、上流段階で
購買情報が把握できれば、仕様提案や、サプライヤの紹介などを通じて、より安価な購買が可能になるからです。
このように、要求部門と調達購買部門のニーズは、相反するのですが、この二者の情報流をスムーズにして、リードタイムの短縮につながるようにするために、調達購買プロセスを、プロジェクトとして情報共有・管理できるようにする必要があります。
特に、最近日本の製造業では、多量少品種量産モデルから、少量多品種少量生産モデルへと、
その強みが移行しつつあり、その点からも、調達購買プロセスのプロジェクト管理のニーズが
高まるでしょう。
次回は、攻めのDXである情報系データの活用と課題、今後の展望について述べていきます。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。