今回は「モノが買えない時代」の課題の、最終回になります。 前回取り上げた対応策について、進め方のポイントや、より 具体的な方策について、考察を述べていきましょう。
前回、サプライヤ供給力不足への対応策として、大きく4つの対応方法を取り上げました。
一つ目は在庫を持つ(生産枠取り、自社で在庫を持つ、長期発注、先行発注などで在庫を持ってもらう)という方法、二つ目はマルチソース化、マルチファブ化、代替品の採用などの複数ソースの確保、三つ目は「サプライヤから有利に扱ってもらう」関係性づくり、四つ目は、何もしない、というものです。
四つ目の「何もしない」という方法は、ビジネス的には難しいでしょう。そのため、今回は前三者の方法について、ポイントを述べます。
「在庫を持つ」「複数ソースの確保」は直接的な対応方策ですが、ここでのポイントは「全社での調整」です。
一般的に、調達購買部門は他部門と比較すると、社内的な地位はあまり高くなく、製造部門などからは、「製造ラインが止まってしまう。誰が責任とるのだ。」などと言われる立場です。また、開発部門に対しても、複数ソース化や代替品採用においては、認証試験などの手間がかかるために、調達部門が要請しても、中々思い通りに動いてくれない、と言った状況でした。
それに対して、現フェーズの、サプライヤ供給力不足は、本質的、構造的な課題であり、短期間で解決できるような問題ではない、という認識を、全社で共有させると共に、開発部門、製造部門、生産計画部門だけでなく、場合によっては、営業部門や企画部門、生産技術部門や試験部門なども巻き込んで、その対応を進めていく必要があります。
つまり、全社通しての、課題認識共有と、合意形成、方策の協力推進が必須、ということが、最初にあげられる、ポイントです。
二つ目のポイントは、「新規開発段階からの関与」でしょう。新規開発段階での関与というと、コストの作り込み、を目的とした、開発購買を思い浮かべますが、これからは、入手性
の良い材料や部品、サプライヤが持つ標準品などの採用、を行うことで、QCDの特にD(納期)を適正化していく必要がでてきています。
開発購買の仕組みは、通常の企業では、ある程度整備されていますので、それをコストだけでなく、入手性から捉え、なるべくカスタマイズさせないようにする、といった取組みが必要となっているのです。
三つ目のポイントは、「サプライヤ/品目毎の細かなリスク管理」です。今回の「モノが買えない時代」の特色は、様々な要因が絡み合って、それぞれのサプライヤ/品目毎に、様々な理由から、供給力不足が生じている、ことでしょう。コロナによる生産拠点の閉鎖や、ウクライナ危機などの地政学リスクなどは、あるサプライヤは大丈夫ですが、特定のサプライヤには、大きな影響を与えている、などの状況を生んでいます。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。