2020年度の紙と電子、両方あわせた推定販売額が、1兆6168億円となんと前年費4.8%増となったようだ。
その証拠に、電子コミックが31.9%増の3420億円、電子書籍は14.9%増の401億円にとどまっている。
「honto」の調べによれば、50~60代による購買が2019年の前年比約117%から2020年は125%と伸びているというから、電子コミックスは、全世代に広まっている。
大手がけん引!
こうした変化をけん引しているのは、間違いなく大手出版社だ。
講談社は、2019年12月~2020年11月の売り上げ約1449億円のうち、紙の雑誌と書籍が約635億円で前年比で1・2%減、電子書籍は約532億円で19・4%増加。すでにイーブンのウエートだ。
もちろん、内訳はマンガがメインだと思えるが、ビジネスとしてはいい感じだ。
KADOKAWAは、2021年第4四半期、電子書籍・電子雑誌で、四半期ベースで過去最高の売上高を更新したという。新規事業にも積極的で、映像事業やゲーム事業との相乗効果も出て、順調にビジネスを伸ばしている。
かつて、「出版社はどうなる?」と心配されたものだが、「紙」を中心としたかつての雰囲気はまったくなく、商材そのもののデジタル化、まさにDXが進んだトップクラスの業界とも言えそうだ。
「読み聞かせ」が大幅に増えた?絵本が好調
紙の出版で頑張っている領域が絵本だ。小さな子どもと共に過ごす時間が増え、読み聞かせの時間が増えたのと、かねてからの読み聞かせの普及が本格化したのだろう。
読み聞かせには、電子よりも紙の書籍のほうが使い勝手がいい。紙書籍の存在意義はこういうところにあるのかもしれない。
ただ、この読み聞かせにも問題はある。「YouTube」など動画サイトへの違法「読み聞かせ動画」だ。出版社の許諾を受けたものとは思えないものが大半であり、出版社、著作者にとっては死活問題だ。
また、著名人による書籍紹介の動画も、著作権的にはぎりぎりだろう。出版側も宣伝になるということで黙認状態(むしろ歓迎か?)だが、人のコンテンツを使って、自分でユーチューバーとして稼いでいるわけだから、これは明らかに著作権を支払うべきビジネスモデルのはずだ。
出版は、アニメや映画、舞台をはじめ、さまざまなエンターテイメントのかたちへ発展する、源流をなすものと言っても過言ではなく、それだけに電子化や動画化への展開は、やり方によっては、大きな利益になることもあれば、逆のパターンもある、難しいかじ取りが必要なビジネスだ。
しかし、これだけコミック系しか売れないとなると、コンテンツの元になる「文字本」の行方はどうなるのか。実際にも、いまの書籍は、読解力の低下が根底にあるのかどうかはわからないが、売れる書籍は、これでもかというぐらい「やさしく」書かれているものばかりだ。
文字による深い読解があるからこその、「わかりやすく動画で解説」や「だれでもわかるマンが版」的なものが生まれると思うのだが、この考え自体がもはや「昭和」の遺物なのだろうか。
コミュニケーションツールとしての言語の変化は変えようがないのか。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24