おいしいトーストを食べたい――。そんな消費者ニーズに応えるかのように、高級トースター市場で“アツアツ”の状況が続いている。 先陣を切ったのは、バルミューダが2015年に発売した「バルミューダ ザ・トースター」だ。当時、トースターの価格は数千円が主流だったのに対し、ザ・トースターは2万2900円(税別、現在は2万3500円)。ケタ違いの価格に対し、業界からは「そんなモノは売れるわけがないでしょ」といった声もあったが、家電量販店などで並べたところ、売れに売れた。[土肥義則,ITmedia]
土肥: 毎日、違うプログラムを使ったとして、20年近くかかるわけですね。先ほど「冷凍厚切りトーストを使って実験……」と話されていましたが、なぜ冷凍パンで実験を行ったのでしょうか?
内田: 消費者はどんな形でトーストを食べているのか。2020年8月に調査したところ、「4枚切り」(27%)や「5枚切り」(24%)など、約5割が厚切りを食べている。また、約7割がパンを冷凍保存していて、そのうち約6割の人は月1~3回冷凍している。このデータから、パンをまとめ買いして冷凍している人が増えてきているのではないかと仮説を立てました。
ただ、冷凍パンを焼くことは難しいようで、約8割の人が失敗しているんですよね。中まで焼くと外が焦げてしまったり、ちょうどよい焼き色だと中は生焼けだったり。
土肥: 利用者のそうした課題を解決するために、機能面にこだわったわけですね。ちょっと気になったのは、1999年に発売した「NB-G100」から機能面は何度もマイナーチェンジを行っていますよね。少しずつ性能はよくなっているようですが、20年以上経って、なぜこのタイミングでフルモデルチェンジすることにしたのでしょうか。従来機と見た目がまったく違う。
内田: ご指摘の通り、NB-G100のモデルからマイナーチェンジを繰り返してきました。購入者の評価は高くて、ECサイトのコメントを見ても、「使いやすい」「購入して正解だった」といった評価が多いのですが、購入前の声はちょっと違うんですよね。他社の高級トースターを見て、「おいしく焼けそうだ」「オシャレでカッコイイ」といった声が多い。
購入後の満足度は高いものの、購入前のタイミングでお客さまの心に響いていない。開発メンバーとしては「いい商品をつくっているので、使っていただきたい」という思いは強いのですが、それがうまく伝わっていないのであれば、「生まれ変わる必要があるのではないか」と考えました。
知らない人をターゲットに
土肥: 商品のことを知っている人は買う、知らない人は買わないということですね。その知らない人をターゲットに開発が進んだわけですか?
内田: はい。他社の商品を分析したところ、マーケティングや商品の見せ方、開発背景などをうまく表現しているなあと感じました。また、デザインはシンプルで美しいモノが多い。一方、当社の商品はどうか。従来機は「トースト」「ピザ」などと書かれたボタンがあって、それを押すだけでよかったので簡便性はあるのですが、デザインを見ると「うーん」となってしまう。
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