新卒の最終選考はゲームで

2008.03.19

組織・人材

新卒の最終選考はゲームで

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

ほぼ500人近い応募者からわずか5名の採用者を絞り込む選考過程にゲームを取り入れている企業がある。その結果は、過去10年での内定辞退者ゼロだ。採用にゲームはどう活かされているのだろうか。

ところが採用サイドが見ているのは実はゲームの成績ではない。ゲー
ムを通じてチェックしたいのは学生の素顔だという。ゲーム、特に何
人かで戦略を競い合うようなゲームをやると、その人の考え方やク
セ、さらには人間性までがあらわになるというのは、よくわかる話
だ。

ここから先は推測になるが、同社の選考スタッフが注視しているの
は、ゲームの進め方の巧拙よりも、そこににじみ出るはずの学生の素
の姿なのだろう。ゲームを通じて浮き彫りにされた人間の本性のよう
なものを見極め、それが自社に合うかどうかを判断する。表面上は最
終選考をゲームでやるというソフトなイメージを醸し出していなが
ら、その内実は極めて冷静かつ厳しく学生を見ているのではないだろ
うか。

ゲームを採用の最終選考に使うことについては、メリット/デメリッ
トがある。デメリットを上げるなら「ゲームなんかで人生を決められ
てたまるか」といった反論が、一部の学生やその保護者から出るリス
クは否定できない。が、おそらくそうした考え方をする人材を同社
は、最初から相手にしていないものと推測される。

あるいはゲーム選考で落とされた学生の心象風景を慮れば、彼らに対
するダメージはもしかしたら大きい可能性がある。しかし、こればか
りは致し方ないところだろう。

一方でメリットはどう考えられるだろうか。まずマネジメントゲーム
は本来、企業の管理職研修用に考えられたものだ。これをクリアする
能力をもつ学生が即戦力となり得る資質を持つ可能性は高い。いくら
ゲームの成績は影響しないとはいえ、基本的なゲームの進め方の巧拙
はしっかりとチェックされているはずだ。

また、このゲームでは最近注目されている地頭力も試されることにな
る。自らが(過去にまったく経験したことのない)経営者としてさま
ざまな経営判断を行なうためには、複合的な要素を将来予測まで交え
て考えていかなければならない。これは地頭力を試すには絶好のシ
チュエーションである。

さらにゲームで最終選考を行なう企業は、メディアに取り上げられる
可能性も高い。すなわちPR効果があることになる。メリット/デメ
リットを天秤にかければ、ゲーム選考はおそらくメリットの方が大き
いと判断できるだろう。

もちろんゲームを通じて判断する学生像については、事前に相当な絞
り込むが行われているはずで、その結果が内定辞退者ゼロにつながっ
ているのだろう。企業にとって今後、ますます重要性が増す人材確保
にゲームを使う。非常に興味深い取り組みだと思う。

※この原稿に盛り込まれた基本情報の多くは、日経産業新聞2008年
2月25日付22面の記事を参考にしました。

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竹林 篤実

コミュニケーション研究所 代表

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