成城石井の調達戦略から工業品の調達戦略の共通性と違いについて考えてみました。
私は、工業製品バイヤーにとっても、調達とは、単なる買い物ではなく、その裏には多くの物語が隠されているのではないかと考えます。単なる部品や原材料ではなく、品質確保に苦労したモノとか、VE提案でかなり質感を上げることに成功したモノとか、自分が考えた通りのシナリオで調達ができたモノとか、昨今のコロナ禍の影響で確保が難しくなった原材料をどうにか買いつないだとか、様々な物語が、その裏にはある筈です。
単なる調達品ではなく、調達品の裏にあるストーリーは調達購買業務の奥深さや興味深さ、そのものにつながります。そういった物語を工業製品バイヤーももっと大事にし、発信し、共有すべきでしょう。
成城石井は地方特産品の新規販売について、最終的に11品目から5品目の取り扱い品目に絞り込んだのですが、その基準は何だったのでしょうか。実はとてもシンプルな基準でした。
一つ目は品質安全基準です。これは食品を扱っているわけですし、今のご時世ですから当たり前です。しかし品質安全基準を満たすといっても一時的なものではなく、仕組みとして安全を担保しなければならないのは、とても難しいことでしょう。
2点目は量の確保です。地方特産品と違い全国展開のスーパーにとっては、全てのお店で品物を切らさないというのが絶対条件になるからです。
3点目はパッケージデザイン。スーパーで販売するためには、綺麗な化粧箱よりも中身が見えるようなパッケージが向いているようです。これは商品が見えることで安心安全にもつながります。
最後はコスト。地方特産品は、お土産として購入する時には多少高くても購入するでしょうが、スーパーには様々な商品がおいてあり、消費者は展示されている商品を比較して購入します。
つまり品質とコストのバランスが取れていることが重要です。これらの4つの基準、これらは、考えてみたらQCDそのものであり、工業製品バイヤーの世界と全く変わらない基準でした。買うものは異なりますが、購入品に求めることは両者とも変わらない。
とても興味深いことです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。