「自信」とは読んで字のごとく「自らを信じる」ことですが、自らの何を信じることなのでしょう───自信Xは「有能さ」を信じるものであり、そこからは「長けた仕事」が生み出されます。他方、自信Yは「意味」を信じるものであり、そこからは「豊かな仕事」が生み出されます。
◆自らの何を信じるのか:2つの信じること
「自信」とは読んで字のごとく「自らを信じる」ことですが、自らの何を信じることなのでしょう。
今日では、何か目標や課題に対し、それをうまく処理し、具体的な成果をあげられると強く思っている───その意味で「自信」という言葉が使われる場合がほとんどのようです。つまり、信じるものは「自らの能力と成果」です。しかし、自信とはそれだけでしょうか? 自信という言葉はもっと大事なものを含んでいないでしょうか?
『広辞苑〈第七版〉』によれば、自信とは「自分の能力や価値を確信すること。自分の正しさを信じて疑わない心」とあります。そう、能力を信じる以外に、自分の「正しさ」を信じることも自信です。
ですから、たとえ自分の能力に確信がなくとも、自分に(あるいは、自分のやっていることに)価値を見出し、意味や正しさを強く感じているのであれば、「自信がある」と言い切っていいのです。そこで、自信を次の2つの種類に分けてみます。
[1]自信X:「能力・成果」への自信
[2]自信Y:「意味・価値」への自信
自信は意欲と相互作用があります。例えば、何か課題に取り組み、見事にそれをクリアして成果が出せたとき、自信Xが生まれますが、この自信Xはさらに上を目指そうという意欲を湧かせます。また、何か課題に取り組み、そこに献身する意義を見出したとき、自信Yが生まれますが、この自信Yはさらに持続しようという意欲を湧かせます。
そのように、自信Xは自分をより高くに引き上げ、自信Yは自分を静かに遠くまで行かせます。
◆長きキャリアの道のりにおいて基盤に置きたいのは「自信Y」
昨今のビジネス現場では、ともかく能力と具体的(特に量的)成果が問われます。そのために、「自分には十分な能力がないのではないか」とか、「他より優れた成果を出すことができるだろうか」といった不安に取りつかれ、不必要に縮こまってしまいます。そして結果が伴わないと「自分はダメだ」と精神的に追い込んでしまう。そしてついにその取り組みをやめてしまいます。
そうした状況で私が言いたいのは、長きキャリアの道のりにおいて基盤に置くべきは「自信Y」だということです。なぜなら、物事は負けたら終わりではなく、やめたら終わりだからです。その取り組みを持続さえしていれば、やがてまたチャンスが訪れます。
私自身の話を少ししますと、私は独立して17年超経ちますが、最初の10年というものは打つ手打つ手がどれも不発で、成果が思ったように出ませんでした。事業サービスも、苦労して出版にこぎつけたいくつかの著作も、潜在顧客や世の中からの反応はほとんどなく、まさに自信Xはズタズタに切り裂かれ、独立事業者として能力無しと烙印を押されているかのようでした。さっさと自営業に白旗をあげてサラリーマンに戻るという選択肢が何度も頭の中をよぎりました。
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2015.07.17
2009.10.31
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。