消費税の増税にともなって、需要喚起対策として、ド派手に打ち出された「キャッシュレス・ポイント還元事業」が6月30日に終わった。そこで、経産省は、事業開始前(2019年9月)と事業期間中(2019年11月、2020年5月)に実施した消費者及び店舗向けアンケートの調査結果を公表した。
まず、実際にどの程度、キャッシュレス決済率となったのだろうか。コンビニや交通系のキャッシュレスを見れば、イメージ的にはかなり進んだのではないかと思っていたが、実態は、2020年4月の段階で32.7%とさほど進んだとは言えない結果となっている。2019年9月で26.1%なので、6.6ポイント上昇はしているものの、2020年1月と比較すると、逆に0.6ポイント減少している。
また、これもコロナの影響だろうが、2019年11月から比較しても、毎日キャッシュレスを利用するという人は減少している。
次に、売上効果についてだが、「消費者及び店舗向けアンケートの調査結果」では、「約40%の還元事業参加店舗で効果があった」と記載してあるが。逆を言えば、約60%の店舗で、参加したにもかかわらず、効果はなかったということだ。特に、人口20万人以下の店舗においては、その比率は増加する。これは、「顧客獲得に効果があったか」という質問に対しても同様の結果が出ている。
つまり、「キャッシュレス・ポイント還元事業」において、過半数は業績に効果がなかったとしていることになる。
調査では、8割以上の店舗は、今後もキャッシュレス決済を続けたいとしているが、本音は、キャッシュレスの顧客に逃げられることへの不安だろう。それに加え、新型コロナ対策としてのキャッシュによる接触機会の減少という課題もある。
さらに今後、還元制度がないままに、キャッシュレス決済を続けるとなると、手数料を考えれば、難しいと考える店舗側も多い。しかも、キャッシュレスの場合は、現金化するまでのタイムラグもある。
小売店舗、特に中小の店舗においては、これまでにおいても利益率はギリギリでやってきた。ここに、キャッシュレス手数料と現金化へのタイムラグが加わるとなると、現実的には困難な店舗は多いはずだ。
もともと、キャッシュというのは、物々交換から兌換紙幣へ、そして不換紙幣となったわけだが、これが始まったのも日本では1942年、たったの80年の歴史だ。よく言われる、日本は現金文化だから、とかいう話でもない。
投資金額うんぬんというが、キャッシュレスによって、紙幣、硬貨をつくる必要がなくなれば、これほどのコスト削減はないはずだ。
もはや、「キャッシュレス・ポイント還元事業」のようなマーケティング的な話ではなく、根本的な政策でなければ難しいのではないか。紙からデータへというのは、先進国はどこでもやっていることであり、このままでは、ますます、国際的な潮流から遅れをとりそうだ。
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