コロナ禍でも「テレワークできるのにしない」日本企業の“最悪の足かせ”とは

画像: 緊急事態宣言後も通勤客でごった返す東京・品川駅(4月20日撮影、ロイター提供)

2020.04.24

経営・マネジメント

コロナ禍でも「テレワークできるのにしない」日本企業の“最悪の足かせ”とは

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 新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、急務となっている外出自粛。中でも政府が出勤の7割減を要請するなど、全国の企業でのテレワーク化が叫ばれている。  一方、人材系シンクタンクのパーソル総合研究所(東京・千代田)が7都府県での緊急事態宣言直後に実施した全国調査では、正社員のテレワーク実施率はわずか約28%。3月前半時と比べ倍になったものの、分析を担当した同研究所の主任研究員・小林祐児さんは現状のこの数値について「全国でテレワークを行い感染を防ぐというシナリオは厳しくなっている」と危惧する。緊急事態宣言が全国に波及した今なお、テレワークが導入されない真の理由について聞いた。[服部良祐,ITmedia]

地域別テレワーク実施率(パーソル総研「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」第2回



都道府県別テレワーク実施率(パーソル総研「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」第2回


小林: 「うちの県ではまだ感染者が出ていない。だから自分の会社はまだテレワークをやるフェーズではない」という感覚の人が多かったのではないか。

しかし、以前は感染者がいなくても1週間後に数十人、数百人とクラスターが発生するケースはどこでも起きている。今回のウイルスには、(潜伏期間が長く)非常に“遅効性”であるという特徴があるからだ。感染者数という、いわば「遅れてやってくる指標」にみんなが反応してしまっているというのが今の状況と言える。

――テレワーク化の遅れを巡っては、企業側のシステムや制度面の問題もよく指摘されますが。

小林: ハンコや書類文化などがテレワークの妨げになっているという話がよく出る。確かに行政をはじめ、紙文化は非常に残ってしまっている。ただ、それも「相手次第」と言えるだろう。

テレワークは従業員1人や個社ではできない。企業活動というものは常に相互の活動になるからだ。例えば、自社でテレワークをやるため電子取引をOKにしたところで、取引先の会社が「うちはまだ書類でやっている」「実際に取りに来て」と言い出したら、そうせざるを得ない。

政府などが(テレワーク促進で)今進めているのは、非常事態宣言を出したり、メディアを通じて危機感を底上げさせるような施策だ。これらは引き続き進めるべきだが、(企業や働き手の間の)危機感の“濃淡”を無くす効果は薄いと考える。反発心を逆に生んでしまうからだ。

大企業・業界団体主導の「足かせ」撤廃を

――業界や地域、取引関係といった企業コミュニティーの中で、通勤の習慣や必要性がまだ維持されてしまっている、ということですね。対応策はあるのでしょうか?

小林: 今まさに求められているのは企業間の足の引っ張り合い、いわば「足かせ」を無くしていくことだ。

具体的に求められるのは、業界団体や大企業といったリーダーシップを取れるところが、納期の緩和や遠隔取引の推進などを推奨する、といった動きだろう。率先して自社以外にも踏み込んだ呼びかけを行える、強い立場の企業が出てきてほしい。非常事態だからこそ、いろいろなしがらみを無くせるタイミングでもある。

マスコミからのコミュニケーションばかりでも反発が生まれ、メディアや行政への不信感をため込むことになる。次の動きとして、「業界トップの企業を動かす」といった戦略的なコミュニケーションを取らないといけない。そうでないと「(大企業が)自社だけできているが……」という状況では、出勤7割減という数字の達成は到底無理だろう。

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