人口の95%が「ロックダウン」状態にあるアメリカだが、早くもあれこれと「コロナ後の世界」に関する予測が飛び交っている。そのうちのひとり、トロント大学リチャード・フロリダ氏の見解に大いに興味をひかれたので要約してみた。社会が一刻も早く「回復」するためには、「新たな常識」に基づく企業の敏速かつ抜本的な対応が要求される・・・。
3.検温の習慣化
空港、オフィス、映画館、劇場、スポーツ競技場、学校、学校の学生寮など、あらゆる公共の場で検温が常識となる。これはもうアジアの一部では実装されている。たとえばシンガポールでは、オフィスビルに入館する際の検温が当たり前になっているという。
4.「リモート」化と「ネット」化
ロックダウンのおかげで、何百万という人が在宅勤務を強いられている。これが、コロナ以前からすでに始まっていた「リモート」化に拍車をかけることになった。ロックダウンが終了しても、人々はバスや電車や地下鉄といった公共の交通機関を極力避けるようになるだろう。在宅勤務を奨励する職場も増えるはずだ。
アメリカには「リモート・ワーカー(テレワーカー)」を対象とした町おこしの取り組みも存在する。オクラホマ州タルサでは、「タルサ・リモート」と銘打ち、全米からリモート・ワーカーの誘致を行っている。ニューヨークやシアトル、サンフランシスコ・ベイ・エリア、ロサンゼルスなど、ここ20年間の「テック・ブーム」をきっかけとして発展してきた都市は人口が密集し、住民は家賃をはじめ生活費の高騰にあえいでいる。これらの都市は、今回のコロナ・クライシスで最も影響を受けた地域でもあり、雇用機会の喪失によって移住を余儀なくされる人たちも出てくるはずだ。今後、より住みやすい環境を求めて地方都市への注目が高まってくることは間違いない。
カンファレンスやその他のビジネス・ネットワーキング・イベントも、少なくとも今後1年から1年半の間はウェブが主要媒体になるはずだ。これらの変化に向けて準備すべきは「今」である。コロナウイルスから身を守るため日々あらゆる注意を払いつつも、企業は我々の社会、経済や、関わるすべての人々の生活を守るために動き続けねばならないのだ。
トレンド予測
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。