昨今のコロナショックですが、我々は2009年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、原発事故、計画停電、タイ洪水などの事案を乗り越えてきているのです。そういう意味から、今我々がやらなければいけないのは、これらの事案から学んだ対応方法を今一度確認することでしょう。もう一度過去の対応について振り返ってみましょう。
またもう一つのキーラーニングは「いざとなったら動かないとダメ」ということでしょう。「今回の対応で三種類のバイヤーに層別された。①何もできないバイヤー②何でもかんでも買いまくったバイヤー③在庫調整と代替品採用(どうしようもない時だけ買いつなげた)に努力したバイヤーの三種類です。」というあるバイヤーの言葉にも象徴されるように、自ら社内外との調整に動いた③バイヤーにならないとダメということです。
そのためには会社の取り組みとして、ある程度の緊急発注についてはバイヤーに発注権限を持たせて柔軟に動けるような権限移譲が必要でしょう。「最終的にどうしても切らしてはいけない原料については直談判をすることも有効」というのはある購買部長の言葉です。
「緊急時において工場やサプライヤとの調整をどれだけ自発的にできるかがポイント」「営業との調整に動き、営業から顧客への代替品の検討に動いてもらうことが必要」など学ぶべき点は多くありました。
また先に述べた権限移譲だけでなく、今一番求められていることは企業としての共通の価値観です。震災発生時に多くのバイヤーを悩ませたのが会社や部門としての共通の価値観が欠如していたこと、と言われています。例えば担当役員は「とにかく生産を止めるな」といい、部長は「まずは情報収集だ」といい、課長は「人命優先」という、このような会社としての共通した価値観や行動指針がない状況が課題であった、と多くのバイヤーが語っていました。
発注権限や情報収集の対象や方法、優先すべき調達品目の明確化、おさえるべきサプライチェーンの対象範囲などを明確にすること。また、企業の仕組みとして経営的視点から必要な施策を策定し、それを講じていくこと、これこそが2011年の事案から学び、今回のコロナ事案に活かしていくべき最大のことだと考えられます。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。