何か変だぞ『働き方改革』

画像: Shutterstock_ metamorworksさん

2020.02.26

経営・マネジメント

何か変だぞ『働き方改革』

野町 直弘
調達購買コンサルタント

最近の「働き方改革」の手法や事例を調べてみると、本来の目的と異なった単なる労働時間短縮運動と言った傾向が強いようです。ここには長時間労働=悪といった固定観念しかありません。本来の働き方改革の目的を達成するための良い事例とは、どのようなものでしょうか。

新しい人事制度のコアとなったのは、ライフスタイルに合わせて月単位で働き方を選択できる「選択型人事制度」です。

ここでのポイントは「選べる」ということ。今はどの企業もノー残業デー、有給休暇取得奨励日、20時になったら消灯、というように、一律の施策が多いです。それを改善すべく、「選択型人事制度」を導入しました。「選択型人事制度」とは、「すべての社員を対象に、理由の
如何を問わず、個人のライフステージに合わせた働き方を提供する。」というもので、働き方は月単位で変更することができます。サイボウズでは3つの働き方を選択できるようです。
1.ライフ重視型:時間に制限があることを本人も会社も了承したうえで働く。時短勤務も可能で、給与は時給制。
2. ワークライフバランス型:残業も可能な働き方。月給制で給与は月40時間分の時間外勤務手当を含んだ金額となる。
3. ワーク重視型:より長時間の勤務が可能な働き方。裁量労働制となるが、みなし残業時間を超えて残業した場合は残業代を支給する。

この3つの働き方から自由に社員に選ばせているのです。また、この制度のもう一つ優れている点は、どの働き方でも、評価が同じなら時間当たり賃金は同額だということ。そしてこの選択を月単位で変えられるということです。

次の事例は味の素です。味の素は、来年4月から所定労働時間を1日当たり20分短縮することを労使で合意する見通しになりました。これが実現すると、基本給を変えずに、従来は7時間35分だった1日の所定労働時間が、同7時間15分になります。

1日の所定労働時間は8時間とする会社が多く、また休憩時間なども含むと実質9時間の拘束時間、となっている企業が多いですが、味の素は、もともと法定労働時間よりも短かった労働時間をさらに圧縮するという、取り組みをしているのです。

これであれば、労働量が不変であっても労働時間が短縮されれば、その分早く帰れることができますし、対価は変わりません。この対価が変わらないという点が、ポイントです。
実質的に生産性の向上に応じた対価になるということ。

一方で、味の素がどのように労働時間短縮の全社展開を進めているかというと、そのポイントは、「各部署への権限移譲」と「人事部によるアシスト」の2点のようです。。

味の素には本社機能もあれば工場もあれば研究所もある。同じ本社内であっても、営業部門と経理部門では働き方は大きく異なります。味の素では、「その部署の最も効率の良い働き方を考えられるのは、その部署自身に他ならない」と考えており、人事部がトップダウン的に施策を落とし込むのではなく、その部署の責任者に労働時間短縮の取り組みを考えてもらうという
ことを重視しているのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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