最近の「働き方改革」の手法や事例を調べてみると、本来の目的と異なった単なる労働時間短縮運動と言った傾向が強いようです。ここには長時間労働=悪といった固定観念しかありません。本来の働き方改革の目的を達成するための良い事例とは、どのようなものでしょうか。
最近、ある仕事の関係で働き方改革の事例について調べていました。しかし、調べていくと、出てくる事例は労働時間の短縮を促進するものばかり、まるで働くことが悪のような感じです。
「働き方改革」の目的やゴールをどこに置くかにもよりますが、「働き方改革」なのですから、皆がいきいきと働け、尚且つ生産性が高くなる(投入時間当たりのアウトプットが高くなる)ことが恐らくゴールとなるのでしょうが、そのための施策になっていないので、短期間で飽きられてしまう危うさを感じています。
以前もメルマガで書きましたが、労働に関する変数は労働量と難易度、品質と対価、と考えられます。難易度、品質が同一であれば、倍働けば2倍の対価が手に入るわけです。一方で、難易度または成果が高ければ、労働一単位あたりの対価は高くなります。例えば執筆で言えば労働量は原稿の枚数となりますので、(何時間かけようが)100枚の原稿を書けば100枚分の、200枚の原稿を書けば、その倍の対価を得ることができるのです。
この例のように労働量が客観的に定量化できれば、極めて分かりやすいのですが、労働量を測定する概念が、多くの場合、労働時間になることから、働き方改革の本来の目的である生産性の向上ではなく、単なる労働時間短縮運動になっているのでしょう。
労働の難易度と品質はコントロールできません。一方で労働時間と対価はコントロールできます。本来であれば生産性が上がれば同じ労働時間でも多くの労働量を生み出せます。つまり、生産性が上がれば短縮された時間で同じ量を生み出すことが可能になるわけですから、労働時間は短くても、対価は当然同じになるでしょう。
今の働き方改革はとにかく労働時間短縮であり、残業を減らしましょう、という方向なので、労働時間を短縮すると、その時間内で同じ難易度と品質の成果を出そうという方向になります。これによって、多少は生産性が上がるかもしれませんが、一方で対価は、残業が減ってしまうので、減額になります。つまり、生産性は上がっているのに、対価は減るというような、おかしな方向に向いつつあるのです。
このような「働き方改革」=「労働時間短縮運動」の手法ですが、調べてみると、これはいい施策だな、というものもいくつかありました。
ここにそれらの事例を取り上げていきます。
一社目はサイボウズの事例です。同社が働き方改革に乗り出したのは会社設立9年目となった2005年とのこと。IT業界の過酷な労働環境他により、同社の離職率は年間28.5%にまで達していたそうです。このままでは組織が疲弊し長期的な成長へのリスクがあるということで、同社は「長く働き続けることができる人事制度」を「会社のために」導入することを決め、2013年
には離職率を4%にまで改善することに成功しました。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。