サードプレイスをつくり、自分自身を取り戻す

2020.02.21

組織・人材

サードプレイスをつくり、自分自身を取り戻す

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

昔は先輩たちが、仕事が終わるといろいろな店に連れていってくれ、社内外の人を紹介してくれ、若手ビジネスマンの人脈が広がっていった。いまのビジネスパーソンにはそうした場はあるのだろうか。家でも職場でもない、ビジネスパーソンの第3の場とは。

古い世代の多くのビジネス戦士たちは、大半の時間を会社(仕事)で費やし、夜は取引先や同僚と会社の近くの繁華街で痛飲し(あるいは麻雀)、家は寝るだけ。たまの休みには、取引先とのゴルフ。何もなければ近くのパチンコ店で過ごす。とはよく聞いた話だ。(今の20代のビジネスパーソンにとってはオヤジ世代だが・・)

ところが、バブルがはじけ、接待費が急激に減り、それでもなんとか持ち直したかと思った矢先にリーマンショックが訪れ、さらに状況はひどくなり、実質的な収入は目減りするばかりとなった。

そこに今度は「働き方改革」だ。残業が禁止となり、会社にいることはできず、しかも、昔ほど仕事もないから、夕方以降はひまだ。会社の経費も抑えられ、使うことができないから、取引先との接待もなければ、ゴルフもない。給料は下がっているので、休日はゴルフどころか身銭きって飲みに行くのもままならなくなってきた。

若い人たちにはよくわからないかもしれないが、こういう状況の人は相当数いるはずだ。

一時、「フラリーマン」と呼ばれ、5時に会社を出されたあと、行く当てもなく、ネットカフェやゲームセンター、激安居酒屋チェーンなどで時間をつぶすサラリーマンが増えているといわれたこともあった。要するに、会社ごとの夜の時間がなくなったため、することがないのだ。

サードプレイスはあるか?

そこで、話題(でもないか)の「サードプレイス」だ。

サード、3番目というのは、会社、そして家、その次の3つめの場所という意味だが、ここでいうサードプレイスとは、レイ・オルデンバーグという人が、『サードプレイス−コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』(みすず書房 2013年)の中で語った、「インフォーマルな公共生活の中核的環境」という概念だ。いわゆる、誰でも立ち寄ることができるコミュニティと考えてもいいだろう。

現代人には、人とのつながりや交流が失われぎみであり、会社でもなく家でもないこうしたコミュニティで、自由でゆるいコミュニケーションやつながりが生まれれば、孤独になりがちな現代人の新たな「場」となるのではないかという考え方だ。

実はこのサードプレイス、行き場のない中高年の人たちに向けた概念ではない。むしろ、残業なしになり、仕事をしたくてもできないサラリーマン、もっと自分の可能性を追求して様々な交流の場がほしい若手のビジネスパーソン、家しか居場所のない主婦など、これまで、積極的にコミュニティを求めてこなかった世代こそ、意義のあるものになる。

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