平成から令和に移ろう2019年でした。筆者には、次の5つの事象が今年の金融市場には大きな影響を与えたのではと思います。 ① 米中貿易摩擦 ② FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げセッションから据え置き方針へ ③ 不景気風が吹き荒れる欧州 ④ Brexit(英国の欧州連合からの離脱) ⑤ 金融緩和方針が続く日本銀行 この5つの事象が複雑に絡み合い、そして散発的に市場のテーマとして注目を浴びる金融市場環境であったと筆者は考えます。それぞれの項目について、現状を考察したいと思います。
④Brexit(英国の欧州連合からの離脱)
この事象に関しては、当レポート『Brexitと英国経済、そして英国投資は?』にて、詳しく解説していますから参照ください。現在の状況だけを述べてみます。
英総選挙では予想通りジョンソン首相率いる保守党が議会の過半数の議席を獲得しました。従って来年1月末にBrexitの決定がEU(欧州連合)との間で合意されます。
問題は1年間の移行期間に限定するジョンソン首相の方針が明確に示され、金融市場に不安感が漂ったことです。
1年間で果たして諸々の諸手続きの協議が終了し、順調に移行されるのかに、多くの市場関係者が疑問を呈しました。
このために為替市場ではポンド相場が総選挙時に最高値、その後じり安の展開をなっています。BOE(イングランド銀行)は、Brexit以降、市場にリスクが残るかどうかを監視し、それに応じて措置をとります。
反対に英経済が予想通り上向き、Brexitリスクがないと判断されれば、緩やかな金融引締め政策に移行するとしています。いずれにしても英経済と金融市場はBrexitの影響次第と言えるでしょう。
⑤金融緩和方針が続く日本銀行
失われた30年間の結果のゼロ金利政策と量的緩和政策が続いています。消費者物価指数を見ていても、11月0.5%前年比と一向に上昇していません。
今年は10月に消費税引き上げが実施され、消費者の財布の紐はとても硬くなりました。そして企業も自己防衛のために準備金を増やしています。
大企業はそこそこですが、中小企業は厳しい状況が続きます。非正規社員が増える傾向、人口減、外国人就労機会を増やす対策、そして当レポートでも取り上げる年金不安問題と、経済にとって明るい見通しは立てられません。
こんなことでは、来年も明るい経済が保証されるとは言い難いというのが現状でしょう。
まとめ:これらの点から言えることは
主要国の金利体系では、依然として低金利維持が続いています。
スウェーデン中銀がゼロ金利政策から脱却する動きと出ているのですが、まだまだ主要国では低位の金利維持が大勢です。
米国に期待したいところですが、トランプ大統領の逆鱗に振れそうです。金利が上昇しない世界的な流れは、突発的事象が出ない限り、好景気に向かう可能性が強いと思います。
少なくともここから更に悪くなる可能性は低いのではと思います。
しかし、米中貿易摩擦の落とし所はまだ見えておらず、欧州経済も活況への道筋がなく、中国の景気不透明感が漂います。
東南アジアの経済にも成熟感が出来つつあり、今後の高度成長を期待してよいものかに疑問がつきはじめています。
日経新聞報道では、東南アジア主要5ヵ国の来年の経済成長率予想4.2%、再来年予想4.5%と安定成長期にあるようで、少なくとも中国の経済成長率よりも低い設定です。
やはり米国経済が世界経済のけん引役であることには変化がなさそうです。
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