自動車業界のサプライチェーン構造が変わろうとしています。CASEの進展は従来型サプライチェーン構造の前提となる増収増益モデルを成り立たなくさせます。 そこで重要になってくるのはCbS(Choice by Supplier)です。
最後はS:Sharedです。SharedはConnetcedと相まってストックの有効活用を促すでしょう。乗用車の稼働率は4%程度と言われています。これは平均すると1台の乗用車は1日1時間しか走っていない計算になります。また平均乗員は1.3人です。5人定員とすると20%しか稼働していないことになりますので、実質1%以下しか活用されていない状況です。車は現状の保有台数は無駄ということになります。一方でカーシェアや非稼働車をもっと活用するUberのようなビジネスが既に出てきており、車の販売台数を激減させる要因になるでしょう。
このように今すぐではないかもしれませんが、CASEが進むと車の売上は低迷します。そうすると現在の全体のパイが伸びるという前提でのサプライチェーン構造は耐力がなくなってくるでしょう。
実際に、まだまだ先のことと考えていた様々な事象が出つつあります。これは今年の10月後半から11月の、いくつかの自動車関連ニュース報道からも言えることです。
「ホンダ系サプライヤ3社を日立オートモーティブが買収」10/30日付発表
これは部品メーカーが自ら生き残りをかけて、技術力を強化し相対的な力関係を高めたいということがきっかけになっています。従来であれば対競合で勝てばよかったのが、将来的には自動車業界全体での競争になっていくと予測されるでしょう。
「CASEが重荷 カイゼンに試練」11/8日付日経新聞
日経新聞記事によると、トヨタのカイゼンによる「1台当たり原価低減額」は18年3月期の3万7千円から今期は2万8000円ほどとなり、大幅に低下する見込みであること。その理由がCASEによる新機能拡充である、との記事です。つまり、一台当たりの改善額が目減りしており、研究開発投資の負担が益々増えている状況と言えるでしょう。
「トヨタ自動車新年賀詞交換会を中止」11/22日付日経新聞
取引先の負担を軽減するという理由(本当にそうなのか)から20年の賀詞交歓会を中止すると発表しました。確かにサプライヤにとってもトヨタにとっても、負担となっている行事とは言えるものの、これは全方位型から重点型へとトヨタのサプライヤに対する考え方の切替えを示すものと考えられます。
「トヨタ、エンジン部品減少に備えサプライヤー支援 豊田通商の取引先紹介」11/29日付日刊工業新聞
エンジン部品関連のサプライヤにトヨタが豊田通商経由で取引先(中国の大手自動車メーカーや国内大手農機メーカーなど)を紹介するという記事です。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。