自動車業界のサプライチェーン構造が変わろうとしています。CASEの進展は従来型サプライチェーン構造の前提となる増収増益モデルを成り立たなくさせます。 そこで重要になってくるのはCbS(Choice by Supplier)です。
自動車業界のサプライチェーン構造、特にトヨタ自動車のサプライチェーン構造は独特です。一言でいえば「緊張関係のある協調体制」でしょう。しかしそれを成り立たせたのは、共存共栄となり得る経営環境、事業環境です。つまり、売上げや収益が伸びるというのが、その前提となっているモデルと言えます。全体のパイとして売上げが増え、収益が増えればサプライヤはトヨタを頂点としたピラミッド構造の中に居れば低リスクで、ゴーイングコンサーンが実現できるでしょう。
ということは、比較的計画的に投資もできます。つまり継続的な研究開発投資も可能ですし、結果的にサプライチェーン全体で競争力を持つことにつながったのです。
しかし、全体のパイとしての売上が伸びない状況が近づいています。CASEが進むと売上は確実に伸びなくなるでしょう。
CASEとはC:Connected、A:Auto、S:Shared、E:Electricの略です。(簡素化しています)またCASEが進むとサプライチェーンの構造改革も確実に進みます。具体的にはトヨタという完成車メーカーを頂点とした、力関係が変わっていく可能性が高いです。
C:Connectedによって車はIoTの端末となります。もっと言えば車は動く情報端末になるでしょう。そうすると車の中で、常時情報を取得することも可能となりますが、端末である車の情報を誰かが把握することができます。これは、ストックで車を管理することを可能とし、稼働率(走っている、且つ人や荷物が乗っている)を高くする方向に働くでしょう。つまりフローでの車の販売台数は確実に減っていきます。
A:Autoによってモジュールメーカーの相対的な立場は強くなります。新車の購入をした方で詳細検討をされた方はADASという安全装置がどこのカーメーカーのどの車種でも一律10数万円という価格設定に驚くでしょう。価格の決定権がカーメーカーでなくモジュールメーカーにあることの証拠です。このようにサプライチェーンの構造は変革しつつあります。
E:Electric。Eはより鮮明にサプライチェーンの構造を変革します。電気自動車にエンジンは不要です。エンジン関連の部品売上は今後確実に減っていきます。自動車業界では通念になっていることですが、エンジンは自動車メーカーにとって、技術力の結集でした。自動車メーカーの技術屋のエリートはエンジン開発か、エンジン実験へ配属されました。また、殆どのエンジンは内製です。自然とエンジン関連の部品メーカーは準内製的なの位置づけの企業が多く、競争よりも協調関係が重視されていました。そのエンジンが無くなるのですから、大きなインパクトであり、サプライチェーンの構造にも影響を与えます。
次のページ「ホンダ系サプライヤ3社を日立オートモーティブが買収」...
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。