現場学とOJTについて述べます
引き続き
“製造業の現場バイヤーが教える
「だったら、世界一の購買部をつくってみろ!」”
に関連する話です。
この本では調達・購買の現場で
普通に起きているトピックを取り上げています。
なかでも5章「新規商品開発」で述べられているのは、
設計部門や製造部門の反対を押し切って購買部が主導して選定した
サプライヤが起こした品質・納品トラブルとその対応です。
製造業では、新規商品開発時に通常数回の試作と工場試作を繰り返し、
品質や納期の改善、安定化を行っていきます。
その過程で品質トラブルが起こり納期が遅延する、
といった現象は日常茶飯事です。
しかし、そういうトラブルに対してどのように対応すればよいか、
という点に関しては誰も教えてくれませんし、
ましてや教科書本やマニュアルには一切書かれていません。
この本が目指したのは、こういうよくある現場の問題を
どう解決していけばよいかについて指針を示してあげることでした。
出版社の編集者によると、これが「現場学」だということです。
元々、日本の企業においてはOJT(オンザジョブトレーニング)や
職人の技を盗むと言った点で「現場学」が継承されたのだと思います。
しかし近年
「人材の流動化」
「現場でのコミュニケーションの不足」
「管理や教育に専念する(いじわるな?)課長さんや係長さんがいなくなったこと」
「プロセス標準化」等々の様々な要因により、
この「現場学」がなくなりつつるのかもしれません。
最近「現場学」や「現場力」という言葉をよく耳にするようになりましたが、
これはこういう力がだんだんと、なくなってきているからなのでしょう。
実際にOJTが崩壊しているという話を企業さんから聞くこともあります。
それではOJTが崩壊しつつある中でどのような方法で
「現場学」を学べばよいのでしょうか?
私は「物語」「ロールプレイ」「ケーススタディ」のような疑似体験が
「現場学」習得に役に立つと思っています。
つまり、現場で学ぶ環境を疑似的に場を作ることで学ばせるということです。
今回の本で共同執筆者とともに我々が物語にこだわったのは
こういう理由からです。
一方で、この本の物語はあくまでも一例でしかありません。
全てのバイヤー、いやビジネスパーソンがそれぞれの物語を持っているのです。
その物語を多くの人たちが共有することができれば、
日本企業の「現場学」は進んでいき「現場力」は向上すると思います。
やはり編集者のお言葉をお借りすると
『本書は、教科書的な知識ではない「現場学」を教えるというもの。
本来(現場学)は教えるものではなく、感じ取るものだけに、
知識を鵜呑みにするのではなく、ストーリーの中で「私ならこうする」
という視点をもって読み進めて欲しい。』
ということです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。