訪日韓国人観光客が激減した結果、窮地に陥っている九州各地の観光地。日韓関係が抜本的に改善する見込みが立たない以上、思い切って「脱・韓国人客」に舵を切るべきだ。
そもそも(地域の研究発表などから読み解く限りではあるが)九州の多くの観光地が韓国人観光客頼りになったのは、1)日本人観光客が少しずつ減り、2)それを補うように増えた韓国人観光客への対応(ハングル語での案内など)を進めた結果、3)韓国側の旅行会社のツアーに組み込まれる度合いが増えるに従いさらに韓国人客が増え、4)それを嫌がる日本人客がさらに減った、という悪循環の構造があったようである。
つまり戦略的に韓国人観光客を誘致した訳ではなく、むしろ「何となく流れに乗ったら韓国人客ばかりになってしまった」というのが実情だというのだ。
実は統計でもはっきり出ているのだが、韓国人観光客は一人当たりの消費額が小さい。これは韓国人がケチだということではなく、むしろ多くの韓国人客が九州の近場へ「国内旅行の延長上」気分で訪れるため、訪日頻度は高めだが一回当たりの消費額は小さいのだろう。
しかも韓国人観光客が訪れる九州の観光地には、韓国人が経営する土産物屋や飲食店が近頃かなり増え、韓国人の団体ツアー客はそうした店を巡るようになっているのだ(実は中国観光客が多い地域でも同様の問題がある)。つまり地元に落ちるカネは意外と大したことがないのである。
さらに悪いことに、韓国人観光客はマナーが悪いという評価が九州の観光地では定着している。商品を触りまくる、別の場所に勝手に移す、値切らずにはいられない、飲食店では勝手に食べ物を持ち込む、等々。
中国人観光客も似たようなことを全国各地で言われているが、彼らは単にマナーを知らないためにそうした行動を行うだけで、人数の多寡とは関係ない。しかし九州における韓国人客は団体の場合に特にひどいらしく、人数にまかせて横暴になる傾向があると聞く。
いずれにせよ諸手を挙げて歓迎すべき客層では元々なかったようだ。そして仮に何らかの事情で日韓関係が一旦改善したとしても、彼の地の国民感情から考えると、気に入らない事態が起きれば再び「ボイコット・ジャパン」のプラカードが声高に振り回されるだろう。
ならばこの際、九州各地の観光協会やDMOは、韓国人客に依存した今までのやり方をすっかり捨て去り、思い切って多様な国・地域からの観光客を誘致することに力を注ぐことが賢明だ。
とはいえ、韓国人観光客頼りになってしまった経緯をみて分かるように、この地域の多くの自治体や観光関係者には、きちんと観光戦略を練った上で地域を挙げて推進する、といった経験もノウハウも欠けている可能性が小さくない。
経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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