「スイスイ行けるICカード」と名打たれた「Suica」が発売されたのは2008年の頃。ICカードの普及を機に、きっぷを購入する人の数が激減しました。同様に、外出先で急に現金が必要になったのでコンビニのATMへ駆け込む人の数も、ここ最近は減少傾向にあり、現金を持ち歩かず、支払い時はカードやスマホアプリで……といった具合に、私たちのお金事情も大きく様変わりしつつあります。銀行の窓口併設店舗数の移転・統合が加速し、店舗の数が大きく減少しています。その一環として、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は2019年前半にATMを相互開放しており、将来的にすべてのATMの開放を検討していると発表。この変化は、ネットバンキング等を活用する人が増えたことでATMの稼働率が落ちたことと、相互開放による固定費削減がその背景にあるようです。そこで今回は、大きく変容する銀行をとりまく“いま”を紹介。
当然ながら、みずほ銀行もそうした“大きな波”については熟知しており、新システムへの移行(統合)完了に伴うみずほFGの会見では、「利便性の高い次世代金融サービスの提供はもとより、LINEとの新銀行設立や、大手財閥との資本提携などの戦略」を表明。さらには働き方改革の一環として「行員の副業を認める制度」まで発表するにいたります。
40代以上の世代であれば、大手都市銀行の行員が副業をしている世の中など考えられなかったことでしょう。
しかしこの新制度は、「銀行の業績や今後の変化次第で、行員はいつ馘首(かくしゅ=くびを切ること。)されるかわからないから、そうした時に備えて今から副業で収入を得る手立てをみつけておきなさい」という、銀行が行員に突きつけた暗黙の示唆と受け取ることもできるのではないでしょうか。
キャッシュレス化を推進する、大水車的存在として
今後、キャッシュレスが当たり前になったとき、キャッシュレスに伴う支払い手段に銀行はどのように変わっていくのでしょうか。
まず、引き落とし決済が増大することで現金取扱業務の割合が激減することは間違いないでしょう。
それだけにATMにかかる固定費や、店舗運営にかかる人件費も大幅に縮小されることになります。こうした変化によって、銀行はますますシステムに膨大な投資をする“システム装置産業”になる可能性が高くなることになります。
ここで他国の状況を例にとってみましょう。米国では意外と日常的な決済行動は保守的な傾向にあり、全体の約30%が現金、次いでデビットカード(約25%)、クレジットカード(約21%)がおおかたを占め、デジタル決済は10%に満たないという報告もあります。
口座をもっている私たちにしてみれば、これからATMに駆け込んで現金を引き出すことは少なくなるでしょうし、キャッシュレス化の変化は、銀行にとって営業店やATMのあり方、そしてビジネスモデルを再考する契機になることは間違いないでしょう。
その点においては、銀行が本来有している安心・安全な方法でのデータ処理、データ保護、支払処理等について強みを発揮できることは間違いないといえますし、窓口を中心とした顧客接客によるサービスの提供から、プラットフォーマーのポジションに立ち位置を変容させ、キャッシュレス化を推進する大水車になることも可能ではないでしょうか。
現金派とキャッシュレス派に二分される中国
一方、すでにキャッシュレス比率が約90%におよぶ韓国や、急速なオンライン決済が急拡大する中国では、銀行のATMで現金を引き出す人の姿はあまりみかけなくなっているとともに、窓口業務を担当していた行員数は激減。中国の四大国有銀行(工商銀行、農業銀行、建設銀行、中国銀行)の18年6月時点の数字によると、四大国有銀行総計で約3万人以上の人員が削減された報告もあります。
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