デービッド・アトキンソン氏の「国運の分岐点」を読みました。アトキンソン氏の日本は今後産業構造の転換が求められており、それは従来の産業間の構造変革ではなく、企業規模の構造変革だと言っています。とても興味深い視点なのでここで紹介していきます。
デービッド・アトキンソン氏の著書「国運の分岐点」を読みました。デービッド・アトキンソン氏は元ゴールドマン・サックスのアナリストであり、現在は国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社の会長兼社長をやられている方です。
私はマクロ経済の専門家ではありませんが、共感できる部分も多く、今回取り上げます。
アトキンソン氏の著書は以下のような内容です。
「日本の経済分析は客観性に欠ける、何故なら、自分たちが望む結論に合致するように強引に因果関係をつくるから。」
「日本の生産性(1人当りGDP)は世界で28位、生産性が上がらない最大の理由は中小企業が多いことである。その原因を作ったのは中小企業基本法と護送船団方式。」
「人口増加の時代には労働生産性(労働人口1人当りGDP)は下がっても国全体の生産性は上がった。日本が世界2位のGDPになったのは単に人口が多いからであり、技術力の高さや勤勉性は関係ない。人口増加時には賃上げよりも雇用促進が望まれた。」
「人口減少時代に入ると、消費を維持するには賃上げを行うしかない。賃上げの実行により、中小企業の統合が起こり、企業規模の拡大につながり、それが生産性向上につながる。」
「政策的には、最低賃金の引き上げが全体の賃上げにつながる。最低賃金は国益が求める最低生産性のラインである。最低賃金を経済政策として考えるべき。最低賃金を上げると中小企業の統合が進み労働生産性は上がる。また人材の需給状況から失業率が高まることは考えにくく、結果的に国全体の生産性も上がる。このように、人口減少時代には雇用促進よりも賃上げが国益につながる。」
前半に上げた「日本の経済分析は客観性に欠ける」という主張については経済分析だけでなく、日本企業のマネジメントも同一のことが言えるかも知れません。特に経済分析については私も同様の印象を持っています。
例えば1985-90年の所謂「バブル経済」が起こった原因についてですが、経済学者は「過剰流動性」と言いますが、何故その「過剰流動性」が「土地」や「株式」などの資産に向かったのか、その点について論理的に分析・説明しているものは、私が知る限り見当たりません。
また「人口増加時代と人口減少時代で打つ手を変える必要がある。人口増加時代には雇用促進を促す政策が効果的であるが、人口減少時代には賃上げを行う必要がある」というのも納得できます。
一方で賃上げはインフレの要因になるため、望ましいインフレ率に収まるようにコントロールする必要があるでしょう。また、賃上げと最低賃金を上げることは必ずしもイコールではありません。中小企業の統合を図り、生産性を高めるために最低賃金を上げることは、確かに効果があるかも知れませんが、一方で最低賃金だけでなく、日本企業全体の賃上げを誘導するような政策を取らないと、消費の底上げにはつながらないです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。