仕事の「自分ごと化/他人ごと化」についての一考察

2019.08.17

組織・人材

仕事の「自分ごと化/他人ごと化」についての一考察

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

私が行っている働くことの哲学ワークショップ『仕事観づくり考房』では、仕事の「自分ごと化/他人ごと化」を考えるプログラムがいくつかありますが、きょうはその一部を紹介します。

◆「主従型」のもとで客はモンスター化する

売買関係には「主従型」というのもあります(図1右)。金を払う購買客(買い手)が優位であり、金をもらう提供者(売り手)が劣位ととらえるタテの関係性です。それぞれは各自の目的を遂げることに目が向いています。2者は金の受け渡しというところで接点があるのみです。

この「主従型」の売買関係のもとではどういうことが起こるか。典型的には、図3のように飲食店に現れたクレーム客を想像するとわかりやすいでしょう。


飲食客は自らの欲望である「1円でも安く、うまいものを食べ、腹を満たしたい」が目的です。そのために金を払うつもりである。だから店は主人である顧客につくせ、のような意識です。

一方、店員のほうは、従者の立場でそれをできるだけ我慢して要望を受け入れようとします。そうすることでお金がもらえ、そのお金で生計が立てられ、仕事以外での楽しみに使えるからです。店員は仕事内容よりも、得たお金で何ができるかを目的にしています。こうした環境や意識は、仕事を次第に「他人ごと化」していく作用があります。

飲食サービスにおいて、「協働型」の関係性が生まれるケースもあります(図4)。母のためによい食事会を持ちたいという客と、おもてなしのプロとしてそれを実現させたいレストランの料理人・店員との関係性がそれです。2者は共有する目的のもとにパートナー同士です。このとき、料理人・店員にとって仕事は「自分ごと」として意識されます。


さて、ここまでが解説です。あなたはきょうも何かを売って仕事にしています。顧客は一般消費者かもしれませんし、業者のプロかもしれません、あるいは社内の従業員かもしれません。客が誰にせよ、あなたの仕事において、売り手と買い手の関係性は「協働型」「主従型」のどちらでしょう? 「協働型」の場合、共有目的は何でしょう? 「主従型」の場合、なぜそうしたタテ関係になってしまっているのでしょう? これを「協働型」に転換するにはどんなことが必要でしょう?

さらに発展して、仕事が「他人ごと化」してしまう要因としてどんなことが考えられるでしょう? 逆に、仕事を「自分ごと化」するためにどんなことが重要でしょう? 2つのタイプの売買関係性を切り口に職場でディスカッションしてみて下さい。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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