お金持ちの家に招待されたとき、家の池で見かける優雅に泳ぐニシキゴイ。 正式に「錦鯉」と書くが、色鮮やかな色彩や斑点の体色が「錦」にたとえられ「生きた宝石」とも呼ばれている。業界団体の「全日本錦鯉振興会」は、日本の「国魚」とも位置づけている。 自宅の庭でニシキゴイを鑑賞することは、庶民からはちょっとイメージしにくい贅沢な趣味だが、これがいま世界的なブームで、とくに外国人の間で人気なのだという。桜の花や富士山などと並んで日本が誇る美しさの象徴という声も聞こえるが、一方で単なる観賞用ではなく、ひと儲けをたくらむ投資として注目されている側面もあるとのこと。さて、実態はどうなのか。
「復興の象徴」となったニシキゴイ
ニシキゴイは、2004年に小千谷を襲った新潟中越地震からの「復興の象徴」とも呼ばれていて、10年以上経った今では、地元の生産者の間で「地震の前より生産が増えているのではないか」といわれるほど規模が拡大。2017年には「県の観賞魚」に指定されるなど、新潟県のシンボルともなっている。
今、ニシキゴイの品種は約100種類以上に上る。代表的とされるのは、
■白地に紅白の斑紋がある「紅白」
■白地に紅白と墨色の斑紋がある「大正三色」
■墨地に白色と紅色の斑紋がある「昭和三色」など。
これらはニシキゴイの御三家といわれ、「泳ぐ宝石」と呼ばれ、愛好家の間で高い人気がある。
観賞用を超えて、投資目的で買う富裕層も現れる
このように芸術滝な美しさが人気を誇るニシキゴイ。
外国人の間では、単に観賞用としての人気ではなく、投資目的で買い付ける動きが出てきている。もちろん、金融商品のようないつでも売買できる流動性はないため、オークション、品評会、口コミ、SNSなどで買い手が見つけられて成立する。愛好家を中心に取り引きされるクローズな市場という意味では、スポーツカーなどと似ている。
さらに、ニシキゴイが市場に出るまでには、二つの大きな流れがある。
生まれたての段階で稚魚の選別が繰り返され、大半は一般用の卸売り業者に売り渡される流れと、その一方で、将来的に高い評価が得られる見込みのある柄をもった稚魚は、品評会に出品するニシキゴイとして区別される。後者の一部が投資に回されるのだ。
品評会に出される稚魚は「立て鯉」と呼ばれ、海外の富裕層などは、この「立て鯉」の段階で買い付けを行うケースが多い。まだ、成長途中のニシキゴイを比較的安値で買い付けておき、やがて成長したときに、品評会などで高値で売りぬくという算段だ。これがニシキゴイ投資の原点だ。
ただ、中国では輸入が制限されているため、立て鯉の段階で購入した後も、国内の生産者に飼育を委託して品評会に臨む「オーナー制」なども利用されている。前述した2億円以上の高値がついたニシキゴイも、明らかに投資目的の業者によって売買されたものと見られている。
ニシキゴイ投資は、単純に儲かる話ではない
ただし、ニシキゴイ投資は、それほど単純に儲かる話とはいいがたい。
事前に買い付けたニシキゴイが有名品評会で評価されれば大きなリターンが期待できるが、万一病気になったり、思ったように育ってくれなければ期待したリターンが得られないケースも出てくる。また、成長してみると思ったほどの美しい柄にならない可能性もある。そうした意味では、非常にリスクの高い投資といえる。
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