日本の景気後退が更に鮮明になりつつある経済指標が、5月の中旬にかけて相次いで発表されました。 政府は今年10月に消費税を8%から10%に引き上げると説明を繰り返していますが、好景気が維持されていると主張する政府見解は本当に正しいのか、ここで再度立ち止まって考察してみようと思います。
第1四半期GDPの検証
それでは5月20日に発表された第1四半期GDP(国内総生産)を検証してみましょう。
下記のグラフ(出所:日経新聞)は2016年から直近の数字と中身の推移を示しています。第1四半期GDP:2.1%(実質、年率)と発表され、市場予想の-0.2%と比較すると一見良い数字のように見えてしまいます。
しかし、中身を検証すると景気後退をうかがわせる内容と言えます。
貿易部門の内容が悪く、輸出-2.4%、輸入-4.6%(前期比ベース)と共にマイナスとなっています。物品の輸出、輸入がマイナスとは、共に取引減であり、貿易額縮小の要因でもあることから景気後退は明白と推測します。
純輸出(輸出から輸入を差し引くつまり(-2.4%-(-4.6%)=2.2%))がプラスとなりこれは計算上成長率を押し上げます。
グラフ上では今年第1四半期部分の青い海外需要棒線部分が異常に伸びていることが示されていますが、このことがエコノミストの計算違いでありGDPを計算上のプラスにしてしまう結果となっています。
また輸入の現状は内需の陰りを示しています。
そして、個人消費-0.1%、設備投資-0.3%(共に前期比ベース)と、消費マインドや企業の投資マインドは極めて低いと言えます。消費者のマインドが低いということは、一部富裕層を除き、財布の紐が固く積極的にお金を使う雰囲気ではないように思います。
ゴールデンウイーク中も家で過ごす人が多いとの調査結果は消費マインドが低下していることを証明していますが、海外旅行者が過去最大であったことからは日本社会は中間層の二極化が進んでいると言えます。
グラフの薄青の民間需要の棒線が前期と比べると大幅に短くなっていることが分かります。そして現在の米中貿易摩擦が佳境に進んでいる現状から、企業経営者は設備投資を進める現状ではなく、むしろ内部留保を増やすべきとの判断に向かうのではないかと思います。
それを補っているのが公共投資であり、公共投資1.5%前期比ベースと、GDPの項目の中では一番高い数字であります。やはり景気後退局面では、政府主導で公共投資を増やすべきであるとの議論が出てくる素地があります。
今回のGDPの数字は一見良さそうに見えるものの、中身は非常に貧しく、数字のマジックによるプラス成長でしょう。外需部分を単純に除くと-0.1%(2.1%-2.2%(純輸出)=-0.1%)となり、実質マイナス成長の景気後退を示しているGDPと解釈しても良いのではないかと思います。
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