自律と他律を超えていく「合律的」働き方

2019.04.04

組織・人材

自律と他律を超えていく「合律的」働き方

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

自律(正)×他律(反)→合律(合)の進化は、観点を変えれば、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)のダイナミズムといってもいいでしょう。あなたが所属する事業組織には、個と組織の「合律的」ダイナミズムが健全に起こっているでしょうか。

◆自律は善で他律は悪か

自律・他律といったときの律は、「ある価値観や信条にもとづく規範やルール」のこと。さまざまな事柄を判断し、行動する基準となるものをいいます。したがって───

[自律的]
=自分自身で律を設け、それによって判断・行動する
(そこには、意志的・能動的な態度がみられる)

[他律的]
=他者が設けた律によって、判断・行動する
(そこには、追従的・受動的な態度がみられる)

とまとめられるでしょうか。このことから一般的に、自律的な働き方はよいことで、他律的な働き方は悪いことだと思われがちです。しかし、そう単純に決めてかかってよいでしょうか。私は研修で、次のような表を出し、受講者に考えてもらっています。

この4象限の空欄にどんなことが当てはまるか。だれしも「自律的×望ましい点」と「他律的×望ましくない点」はすぐに思い浮かべることができます。しかし、じっくり考えると、「自律的×望ましくない点」や「他律的×望ましい点」についてもいくつか出てくるでしょう。

例えば、自律が過剰にはたらくと、自己中心的な暴走や逸脱を生みます。自律的働き方がいつしか「俺様流」の独善・強要に変わるわけです。自律意識過剰の人ほど、プライドが高く、強引な判断でトラブルを抱えたり、組織・上司の意向が自分のものと異なると「こんな会社やってられるか」とすぐに切れてしまったり、そんなケースはよくあります。

また、他律的な働き方は、ときに効率的でミスの少ないものです。もしその組織が、過去から営々と築き上げてきたノウハウを持っている場合は、下手に個人が独断で動くより、組織の持つ暗黙知・形式知に従って(=他律的に)淡々と仕事をやるほうがいい場合もあります。ただ、それに安住してしまうと、他律的の望ましくない面がじわり出てくるわけですが。

いずれにしても、ここで押さえたいことは、自分の律も他者の律も完璧ではないことです。そしてさらに重要なのは、両者の律を「合して」つねに「よりよい律」を生み出していくことです。

◆自律と他律を高い次元で止揚する「合律」

さて、両者の律を合するとはどういうことでしょう。

ある仕事をやろうとするとき、組織や上司はこう考え、こう行なうようにと命令してくる(=他律的な)意志と、それに対し、「いや、自分はこう思うので、こうしたい」とする(=自律的な)意志が生じます。

そこで自分と上司なり組織なりが討議をして、双方が納得する答えをつくり出そうと努めます。そして何か新しい知恵を含んだアイデアが生じたとします。この自分と他者の間に生み出された第三の答えは、自律も含み、他律も含み、一段進化したものです。

次のページ◆個々が合律的に振る舞う組織は変化に強い

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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