『人生がときめく片づけの魔法』がベストセラーとなり、近藤麻理恵(通称・こんまり)の名が世間に知れ渡ったのが2011年。 あれから8年ほどたったが、こんまりはいまやKonMariとして米国に進出し、そのメソッドが世界中で大ブームになっている。驚きべきは、2015年には、米国TIME誌が選ぶ「世界でもっとも影響力のある100人」のうちの1人に選ばれたことだ。 こんまりのなにが世界をとりこにさせるのか、そのわけを探ってみよう。
順序立てて片づければ、不用物はどんどん排除できる
初めのうちは戸惑ってなかなか仕分けが進まない相談者も、こんまりの指導を理解するにつれてしだいに手際がよくなり、やがて膨大な処分すべき洋服の山ができてくる。
いつも着ている愛着のある服、大事なときに着る服、大切な人にあうときの服、なつかしい思い出の服、そうしたものだけが残されていく。
しかし、それらは思ったほど多くはなく、大方はクローゼットに長い間つるしたままだったものが多く、感謝の言葉とともに処分されることになる。
洋服から始まって、本、書類、小物などに進み、一番最後が写真や手紙などの思い出の品だ。洋服が最初で思い出の品が最後なのはちゃんと理由がある。洋服はときめくかどうかの仕分けがもっとも容易で、ビギナー向け。
思い出の品はもっとも時間がかかり、熟練が必要。思い出の品から仕分け作業を始めると、時間がかかりすぎて挫折する可能性があるので、必ず洋服から始めることをこんまりは指導している。
こうして家の中の不用なものはどんどん排除され、きれいに片づいていく。アメリカ人にとって日本人はきちんとした国民、ルールを重んじる国民であることからも、日本人であるKonMariから、そうしたイメージが喚起されるとともに、番組を観た視聴者からは驚きの声が上がっている。
片づけとは、つまり「自分の人生を見つめ直すこと」
それにしても、なぜこれほどまでにヒットし、世界的ブームになったのか。
2011年にベストセラーとなった当時、筆者も最初はあまり興味はなかった。家庭の主婦向けの上手なお掃除の仕方マニュアル本ぐらいにしか思っていなかったのだが、それが20万、30万、やがて50万部となるとさすがに無視することもできず、手に取って読んでみたのだが、そこで本当におどろいた。カルチャーショックを受けたといってもいい。
上に記したこんまりの片づけのときの所作、たとえば一点一点を手に取るとか、処分すると決まったものに「ありがとう」と感謝するとかは、一見形式的なセレモニーのようにも見えるが、決してそうではない。
洋服でも、本でも、「ときめく」かどうかで手元に残しておくか、処分するかを決めることは、そのタイミングで自分の過去、現在、未来を思い描くことになる。この洋服を購入したときどんな気持ちだったか、どんな人と会うときに着ていたか、そしてこれからどんな場面でこの服を着ることになるのか、それらを思い描くことになる。
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