文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビュー。 パーソナリティのタケ小山が今回訪ねたのは、米アップル社の新社屋に数千脚という単位で椅子を納入したことで世界から熱い注目を浴びた広島の家具メーカー・マルニ木工社長の山中武さん。 老舗の創業家の後継者として生まれ、子ども時代からずっと親に反抗していたという山中さんが家業を継いで世界的ヒット作となる椅子シリーズ『HIROSHIMA』を生み出すまでの紆余曲折のストーリーを追いかけてみたい。
100年続くものづくりを続けたい
銀行を辞めてマルニに戻った当初は、売り上げダウンの歯止めが聞かなくてそれを一時的にでも埋めるために本来はやりたくない商品開発も山ほどやってきたという。
「でもね、そんなやり方では勝てないんです」
今ももちろんお得意先のオーダーに答えて製品を作ることもあるが、基本的には「自分たちが本当にお届けしたいもの」をつくることに徹している。
「職人さんたちは、僕がどうこう言って動く人たちではない。ただ、いざという時にはいつでも一緒にやるよというスタンスでいます」。職人さんたちのモチベーションアップに効果的なのは「売れている、お客さんが使ってくださるということ」だそうだ。その後、ちょっと笑いながらこんな話を教えてくれた。
「うちの工場は一般の見学を受け入れているのですが、お客さんがたくさん見にいらっしゃるときは職人たちもすごく嬉しそうなんです。見学客が女性ばっかりなんて日には、みんな“勝負作業服”を着て仕事していますよ」
広島県広島市内の湯来町という山間部に工場はある。「本当に田舎です。標高は400m。冬は雪がどっさり積もります」。広島が、地元が、今ではとても大好きだという山中さんは地方へのUターンやIターンを希望する若者に向けてこんなメッセージをくれた。山中さん自身がかつて教わった言葉だ。
「やってみてから、考えろ」
悩んでないで、まず一回動いてみたらいい。やってみてダメだったら元に戻せばいい。いい加減に聞こえるかもしれないけど、やってみてから考える。この順番が大事だという。
「やってみてから考える」を繰り返しながら、確かな手ごたえを見つけてその種を育てて仲間と出会い、ともに成長してきたこれまでの日々。マルニ木工は9年後の2028年に100周年を迎える。
「100年後の後輩が、100年前の先輩がこんなのを作っていたんだな。わしらもまだおんなじもの作ってるぜ」。そんなふうにこれからもずっと続いていくことを山中さんは願っている。
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