特定技能資格制度と出稼ぎ

画像: Kuruman

2019.02.07

経営・マネジメント

特定技能資格制度と出稼ぎ

野町 直弘
調達購買コンサルタント

昨年12月に入国管理法の改正が決まりました。 新たに特定技能資格制度というものがスタートします。 しかし歴史的に見てみると似たような仕組みは昔から受け継がれているのです。 それは何でしょうか。

歴史的な経緯も考え併せると労働力の担い手については、どうしてもバッファーが欠かせないことがわかります。

戦後、先ずは出稼ぎから始まりました。それが出稼ぎではなく季節工や期間工という名前で地方の労働者を工業都市の工場が受け入れることにつながったのです。景気のよいバブル期など
には期間工が取り合いとなり、人事部門以外の一般社員も自分の業務を一時停止させても採用活動を手伝うなどもあったことが記憶に残っています。

ところが、1990年の入国管理法改正を契機として、日系人の活用が積極的に行われました。ブラジルを中心に、ペルーやアルゼンチンといった国から、大勢日系人がやってきました。
彼らの多くは業務請負の形態で製造業の工場で働いていました。

しかし、2008年のリーマンショック後大量の派遣切りが行われ、多くの日系人が母国へ帰りました。ブラジル人については、08年には約32万人が日本にいたのに、2017年末は18万人弱に
減りました。激減した日系人に代わって増えたのが、技能実習生だったのです。そして今年の法改正で技能実習生という本来の目的とは異なる制度への便乗から「特定技能資格」を認めることになったという流れでした。

こう考えると今回の入管法の改正も所詮出稼ぎの延長のバッファー労働力の確保にしか過ぎない、ということがわかるでしょう。以前は毎年農家の閑期になると助けに来る人がいました。こういう人が労働力のバッファーになっていたのです。労働力のバッファーは必ず必要であり、それが今は技能実習生それが委ねられている状況なのです。

つまり、今回の法改正はあくまでも「出稼ぎ」なんです。移民受け入れするかどうか、等ではなく「出稼ぎ」の延長としか捉えていないのです。
そうでなければ、「家族同居は限定的にしか許さない」とか、あり得ないでしょう。そして留学生のアルバイトは昔の主婦のパートの代替です。このように外国人を人財として捉えていないことがわかります。

確かに移民を受け入れることには躊躇する方も少なくないでしょう。でも積極的に移民を活用し、世界中から優秀な人を集め競争力を高めるという考え方に反対する人はいないでしょう。逆に働く人にとって魅力的な国にしなければ自然と人が流出していきますし、より一層集まりにくくなります。
外国人の雇い負けどころか日本人の雇い負けにつながる恐れも大いにあるのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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